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一業一会員制

 ロータリークラブ設立にあたって、ポール・ハリスはロータリー運動を正しく維持していくための前提として「一業一会員制」を固辞していくことが欠くことのできない必要条件であると考えました。

 ロータリークラブが一業種一人で選ばれた良質な職業人で構成されることは、他の類似クラブには無い特徴のひとつです。会員を一業種から一人選んだ理由は、同業者がいると自然に利害関係が生じて。親睦が阻害されると考えたからです。特に、初期は会員間の物質的互恵主義が基本でありましたから、なおさら一業種より一会員でないとクラブの存在意義がありませんでした。しかし、現在のクラブで親睦のために同業者を排除するという理論は納得いく説明ができないものになってきています。現に、制度上からも、アディショナル会員制やシニア・アクティブ会員制などの導入によって、厳密な一業一会員制は崩壊しつつあります。

 ロータリークラブには、業界が特定の人を会員として推薦したり、自分がロータリーに入りたくて自薦する手続きは存在しません。その人を熟知している会員がいて、ロータリアンとしてふさわしいと認め、他に同業者がいないことを確認した上で、その人を候補者として推薦する手順を踏むことになります。一業一会員の選定とは、業界や本人が代表者として認めたからではなく、ロータリークラブが、その人をその人が属する業界の代表者として選ぶことです。全てのロータリアンは、その人が属する業界にロータリーが派遣した大使だとする考え方です。ロータリーの目標は、会員各自が奉仕の哲学を理解し、ロータリーが蓄積している数多くの職業奉仕事例を実践することによって自己改善を計り、一層高まった職業モラルを、その人の職場や業界へと広げてもらうことにあります。

 職業は一般に事業と呼ばれる業務と、専門職務と呼ばれる医師、教職、法曹職、宗教職等の業務に分けられます。中世の中で、王、貴族、武士(騎士)、農民、奴隷といった世襲的な階級制度社会の中で、本人の努力次第で、身分の枠を超越して勝ち取ることができる特殊な地位を占めていた神職が、専門職務の始まりといわれています。神職はやがて医師や教職に分化していきますが、専門職として手厚く遇されていたので、その業務に対して見返りを請求する必要はありませんでした。その本質は現在も同様で、専門職務は利潤を追求する目的で業務をおこなうものではなく、特殊で高度で専門的な業務遂行に対して、感謝の念を込めた謝礼が支払われる性質のものです。だから業務の執行にあたっては、まずその業務の倫理基準が優先され、対象が何人であろうとも、また支払われる対価に左右されず、全力を傾注すべきという高い職業倫理が要求されます。

 一方、事業などの商取引においては利潤を得ることは当然のことであり、問題は何をもって適正な利潤と考えるかにあります。取引の原形は物々交換をもって始まり、やがて需要の二重一致の煩雑を解決するために貨幣が考案されます。そして物とお金との交換の段階で利潤の概念が生まれてきました。

 事業は、その利潤を適正に保つことによって得た信用を基本にして、永続性のある取引を続けることが大切であり、濡手に粟の一攫千金を夢見るあまり、品物の価値を無視した法外な利潤を要求したり、原価を下げるために下請や従業員を不幸にしたり、実体の伴わない利潤の追求に走ったりすることは、許されないことだと考えなければなりません。

 ロータリーでは、事業と専門職務を一体化して、Vocationと呼び、全ての職業は有為な「天職」であると考えて、ともに高い職業倫理を要求しています。ロータリーで会得された高い職業倫理は、まず最初に自分の職場で反映されなければなりません。良質な職業人とは、自分の幸せは自分の周りにいる人の幸せと無関係ではないことを自覚した人のことをいいます。顧客や取引先や従業員や下請の人々の幸福を考えて事業をおこなってこそ、始めて自分の事業を健全に経営していけるのです。
 
 ロータリーの「一業一会員制」のために、ある人が代表として入会すると、その地域の同一職業の他の職業人は全員、ロータリー活動に参加できなくなります。これが、一般の人からロータリーは閉鎖的、特権的クラブといわれる原因であり、これに対する不満と批判から誕生したのがライオンズであるといわれています。

 ロータリークラブの基本原則として永年守られてきた「一業一会員制」も、時代の流れとともに徐々に枠が広げられつつあります。同一テリトリー内における二階建、三階建のクラブの設立は、ロータリーの基本原則を崩すことなく、同一職業の他の職業人のロータリー運動に参加する機会を与えました。

 制度面から一業一会員制を崩したのは、アディショナル正会員(1915年導入、1960年、1992年、1995年拡大解釈、2001年廃止)、パスト・サービス会員(1930年申告制、1992年自動的移行、1995年拡大解釈、2001年廃止)、シニア・アクティブ会員(1939年申告制、1968年自動的移行、2001年廃止)制度の導入です。アディショナル正会員は、そのいずれもがすでに同一職種で会員になっている人の承諾があって、始めて入会が許されますから、いわば合意の上ということになります。パスト・サービス会員もすでに職業を失っているという前提ですから問題はあまりありません。しかし、シニア・アクティブ会員の場合は若干事情が異なってきます。年齢によって差があるものの、最短でわずか5年、最長でも15年在籍することによって自動的にシニア・アクティブ会員に移行し、職業分類を失うことになります。そのため、30代、40代で入会した場合、シニア・アクティブ会員になったときにはまだ現役の職業人です。シニア・アクティブ会員になったことで、職業分類が開放され、同一職業の人が入会するという事態になってしまっていました。

 これら矛盾を解消するために、2001年の規定審議会においてアディショナル正会員、パスト・サービス会員、シニア・アクティブ会員は廃止され、正会員と名誉会員の2種類だけとなりました。しかし、すでに各ロータリークラブには同一職業の人が入会する事態となっていたため、一業種5人まで同一職業を認めるというロータリーの根幹を犯しかねない状態となってしまいました。(一業種5人までは、会員数50人以下のクラブの場合であって、それ以上の会員数のクラブは10%以内とすることになっています)

 運用面から一業種一会員制を崩しているのが、職業分類の細分化と専門家です。「外科」の職業分類が充填されている場合、同じ外科医を「胸部外科」「消化器外科」というようにする手法です。ロータリーの原則からすると、あまり褒められた手法ではないと非難がある一方で、今まで職業分類の壁に阻まれて入会不可能だった良質な会員を獲得するための方法として採用しているのが現状です。

 職業分類の基準が乱れてきた責任の一端は、1968年度のRI理事会決定にあるといわれています。それ以前は、RIが作った職業分類表をそのまま採用しなければなりませんでした。これが、各クラブだけでなく、国家、地域の特殊性を無視しているという弊害が指摘されました。すなわち、地域に密着した特殊な職業、たとえば「日本刀研磨」とか「ベネチアンガラス製造」といったような職業が、RIの標準職業分類にないからという理由で、ロータリーに入会できませんでした。これらの非難を受けて、1968年、RI理事会は職業分類表の管理を放棄して、その作業をクラブに任せるという措置にでたのです。

 クラブの自治権の拡大といえばそれまでですが、この結果、ロータリー運動の基本であった一業一会員制の前提となる職業分類表のRI管轄を放棄した責任は重大です。それ以降、職業分類の細分化が各クラブで進み、同一職業人の入会の道を開くことになり、ついには2001年の規定審議会において一業種一人制の廃止となりました。

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