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奉仕の拡大 -職業奉仕-

 ロータリーの綱領が、「有益な事業の基礎として奉仕の理想を鼓吹し、これを育成する」という文言で始まっています。これはロータリーの根幹が職業奉仕にあることを意味しています。数多く存在する奉仕クラブの中で、職業奉仕の理論付けと実践を活動主体とするクラブは、ロータリークラブ以外には存在せず、言い換えれば、職業奉仕団体であることが、ロータリークラブの特徴であるともいます。

「職業奉仕」というロータリーの専門用語を、職業Vocationと奉仕Service とを結び合せた一般的な熟語として考えるところから、職業と奉仕の単語の持つ意味をめぐるいくつかの異なった解釈や誤解が生じ、職業奉仕の概念を難しいものにしています。職業奉仕を正しく理解しようと考えるならば、職業奉仕 Vocational Serviceという言葉は、ロータリーが独自に作り出した新しい概念を持つ用語だという前提に立つことが必要です。

「親睦」から出発したロータリー運動はその進化過程の中で、まず「会員の事業上の利益の向上」という目的を加えました。当初は会員間の原価取り引きなどの物質的相互扶助によって事業上の利益の向上を図りましたが、その行為の不公平さに気づいて、精神的相互扶助による利益の向上に軌道修正し、それが現在の職業奉仕の源流ともいる一般奉仕概念として確立されました。初期ロータリー運動の歴史は、職業奉仕概念を生み出し、その理論づけをおこない、ロータリー哲学として完結させた歴史ともいます。

 ミシガン学派の経営学、特に販売学の大家としてロータリー運動の理論づけを試みたフレデリック・シェルドンは、ロータリークラブが職業人であるロータリアンで構成されている以上、会員個人の事業母体の発展ないしは安定的な維持、利益の向上を図ることが、ロータリー運動を持続し発展するための大前提であると考えました。シェルドンは、繁栄する事業の共通的な特徴に、顧客や取引先の立場を配慮した Service があることを指摘し、不正や不道徳や世間に受け入れられないような方法で、一攫千金の利益を上げるよりも、「自分の事業の永続性のある発展は、顧客や取引先や従業員や下請など自分の周りにいる人たちの幸福に配慮しながら、適正な利潤を確保することによって、始めて得られるものである」とする考え方を説き、それがロータリーの標語であるHe profits most who serves bestを生み出しました。

 この標語は、フランク・コリンズが同時に提唱したもう一つの標語Service,not selfとともに、1911年にポートランドで開催された第2回全米ロータリークラブ連合会大会で、ロータリーの標語として採用されることになります。
 この大会でロータリー・モットーとしてふさわしいと認められた二つの標語は、Service,not selfが1921年にService above selfに変更されるという経緯こそ経ましたが、その後40年間、ロータリーの根本的な理想を効果的に表現する標語として、一般大衆やロータリアンの心にはっきりと印象づけられ、奉仕こそ利益の基本であるという真理を教えてきました。その結果をふまえて、1950年デトロイト大会?における決議50−51によって、この二つの標語はロータリーの標語として正式に採択されるにいたりました。

 職業奉仕とは、単に自己の職業活動に打ち込むことでも、利益を無視してサービスすることでもありません。Serviceの心と実践があるからこそ、事業の安定と発展があり、適正な利潤が得られるからこそ、Serviceができるという前提に立って、自分の職業活動に関連する全ての人々と、利益を分かち合いながら事業を営めば、精神的にも物質的にも最高のprofitsが得られることを、自分の職場を実例として証明することによって、業界全体にServiceの必要性を実証することであります。そして、そのために日々、普遍的におこなう職業生活を、ロータリーでは職業奉仕と呼んでいます。

 職業奉仕概念と相前後して生まれてきた対社会的な奉仕、すなわち社会奉仕Community ServiceにおけるServiceの言葉の持つ意味合いは、ボランティアやチャリティーの色彩が強く感じられ、職業奉仕のServiceとは別次元のものと考えるべきです。

 ロータリーの綱領から職業奉仕を考えるとき、すでに、1912年の綱領において、職業奉仕の基本理念が明文化され、現在に引き継がれています。
(1)職業はVocationすなわち天職であり、世の人に有用であると認められたすべての職業は神聖であって、その職業には貴賤がない。
(2)自己の職業の道徳的倫理規準を引き上げるために努力する。
(3)自己の職業の品位を上げて社会的認識を高める。

 初期ロータリーにおける一般奉仕概念の模索は、すなわち職業奉仕概念の模索は、1911年のロータリー標語の採用、1915年のサンフランシスコで開催された第6回国際ロータリークラブ連合会年次大会におけるロータリーの綱領の改正、ならびに、「全分野の職業人を対象とするロータリー倫理訓」が採択され、1916年の「ロータリー通解」A Talking Knowledge of Rotaryの発行によって、その大要が確定されました。

「道徳律」とも呼ばれるこの「ロータリー倫理訓」は、ロータリアンの職業上の倫理観を成文化したものであり、1913年バッファローで開催された第4回国際ロータリークラブ連合会年次大会で、最初の起草委員が任命され、全世界のロータリアンから職業倫理に関するアンケートをとる作業が開始されました。翌年のヒューストン大会に提出するために、その作業を引き継いだアイオワ州シューシティクラブのパーキンズ他5名の起草委員が、ヒューストン行きの特別列車の中で、急遽まとめ上げたといわれています。翌1915年のサンフランシスコ大会で正式に採択されました。そして「ロータリー通解」に全文が掲載されました。

《全分野の職業人を対象とするロータリー倫理訓》
1.わが職業は価値あるものであり、世に奉仕する絶好の機会が与えらていると考えるべきこと。
2.わが身を修め、わが能率を向上し、わが奉仕を拡大すべきこと、そうすることによって、最も奉仕するもの最も多く報いられるというロータリーの基本原則に対して忠実なることを立証すべきこと。
3.われは実業人であり成功の野心を抱いていることを認める。同時に道徳を重んずる人間であり、最高の正義と道徳に基づかざる成功はこれを欲するものではないと自覚すべきこと。
4.わが商品、わがサービス、わが創意工夫を、利益を目的として他と交換するのは合法にして道徳に基づくとの信念をもつべきこと。ただし、全ての当事者がこの交換によって利益を受けることを前提とする。
5.わが職業の標準を向上させるため最大の努力をいたし、その結果わが業務の進め方は賢明にして利益をもたらし、この実例にならえば幸福への道が開かれることを同業の者に悟らしむよう実践すべきこと。
6.わが競争者と同等ないし、それ以上の完全なサービスをなし得るような方法をもって業務を運営すべきこと。もし疑わしい際には厳格な意味の責任義務を越えて一層のサービスをおこなうこと。
7.専門家あるいは実業人の最大の資産のひとつはその友人であることを理解すべきこと。?そして友情を通じて得られたものこそ妥当なものであることを理解すべきである。
8.本当の友人は互いに強要するものではなく、利益のためにみだりに友人の信頼を用いることはロータリーの精神に一致せず倫理訓を汚すものである。
9.他の人がおこなわないような不正な方法によって機会を利用して得た成功は合法的でなく道徳にも反する。また道徳的に疑わしいため他の人が採らない機会に乗じて得る成功などは欲しないこと。
10.われは一般の人以上にロータリアンたる友人を拘束することはしない。ロータリーの原則は競争ではなく協力であるからである。党派心はロータリーのごとき制度においてはあってはならない。人格はロータリーの内に限られるものではなく、広く人類一般に深く根ざすものであることを確認し、全ての人や社会制度をこの高遠な理想に向かわしめるためにロータリーは存在するものである。
11.最後に「全ての人にせられんと思うことは人にもその通りにせよ」という(マタイ伝第7章)黄金律の普遍性を信じ、地上の天然資源に対して全ての人に均等な機会を与えられてこそ人類社会は最良の状態となるということを主張するものである。
 
 この「ロータリー倫理訓」は全ロータリアンに対する職業倫理基準の集大成となりましたが、後日、その内容の厳しさと表現方法が宗教的であるとする批判が続出します。特に6章の「もし疑わしい際には厳格な意味の責任義務を越えて一層のサービスをおこなうこと」を厳密に解釈すれば、販売した商品については永久に責任を取らなくてはならず、現実の問題として実効不可能という批判が集中しました。

 表現に対する非難は、11章の宗教的基準である黄金律をロータリー倫理基準に据えたことに対する反発であり、政治と宗教は取り込まないとするロータリーの原則に反するのみではなく、逆にロータリー運動が宗教活動と混同され、無用の誤解を招くというものでした。

 RIもその位置づけに苦慮したあげく、1927年に改定委員会を設置、1931年に宣伝したり領布することが中止され、ついに1951年にロータリーのあらゆる文書から姿を消しました。ただし、職業奉仕のよりどころとして「職業倫理訓」の存在を否定することには、ためらいがあったらしく、国際ロータリー細則第16条「道徳律」はその後も残されましたが、ついに、1980年の改正で完全に削除されることになります。

 こうした経緯から「職業倫理訓」は姿を消したものの、その内容は職業奉仕の真髄に迫るものとして復活を望む声も多く、ついに、1989年RIはこの「職業倫理訓」に代わるものとして、その内容に大幅に修正を加えた「職業宣言」を採択しました。

《職業宣言》
(1989年規定審議会)
(1)職業は奉仕の一つの機会なりと心に銘せよ
(2)職業の倫理的規範、国の法律、地域社会の道徳規準に対し、名実とも忠実であれ
(3)職業の品位を保ち、自ら選んだ職業に於て、最高度の倫理的規準を推進すべく全力を尽くせ
(4)雇主、従業員、同僚、同業者、顧客、公衆、その他事業または専門職務上関係を持つ全ての人々に対し、ひとしく公正なるべし
(5)社会に有用な全ての業務に対し、当然それに伴う名誉と敬意を表わすべきことを知れ
(6)自己の職業上の手腕を捧げて、青少年に機会を開き、他人からの、格別の要請にも応え、地域社会の質を高めよ
(7)広告に際し、また自己の事業または専門職務に関して、これを世に問うにあたっては正直専一なるべし
(8)事業または専門職務上の関係において、普通には得られない便宜ないし特典を、同僚ロータリアンに求めず、また与うることなかれ。

「職業宣言」の間接的な表現に比べれば、「ロータリー倫理訓」は直接的且つ具体的であり、万人の心を強く打ちます。多少のキリスト教的な宗教色があるとしても、その精神はロータリー職業倫理の真髄を捉えており、現在にも充分通用する理論と思われます。

 職業人と?してのロータリアンの心構えを、ロータリーの倫理基準から具体的に記述したものが「ロータリー倫理訓」や「職業宣言」とするならば、それを、ロータリアンのみならず一般の職業人にも理解できるように、簡潔且つ的確にまとめたものが「四つのテスト」です。

《四つのテスト》
言行はこれに照らしてから
1.真実かどうか
2.みんなに公平か
3.好意と友情を深めるか
4.みんなのためになるかどうか

 この簡単な言葉が生まれる背景には、次のようなエピソードがあります。

 1954年度の国際ロータリー会長ハーバード・テイラーは、その22年前にシカゴのあるアルミ食器製造会社の社長を引き受けることになりました。その会社は破産状態になっており、彼は債権者の依頼でこの会社の再建に乗り出したのです。テイラーがいろいろ調べてみると、会社の将来は絶望に近いものでした。同業の会社には、実力を備えたものがいくつもあるし、もちろんそこには優秀な社員がたくさんいました。これらの会社に肩を並べていけるものではありませんでした。

 そこでテイラーは考えました。この瀕死の重傷を負った会社を再建するためには、従業員一同、一丸とならなければならない。そのためには、共通の信念を持たなければならない。しかも、強力な同業者と競争できるくらいの製品を作り出す精神的基盤が必要だと考えました。 ここがテイラーの偉大な点です。普通の人ならば、生産がどうの、材料がどうのという有形の製造過程だけを追うのですが、その根底にある人間の精神に着目したのです。そして6ケ月ほど社長室の机の上に書いては消し、消しては書いているうちに命令的倫理訓ではなく、自発的且つ発想刺激的な表現が浮かんできたのが、この「四つのテスト」です。

 その第一のもの、したがって原則の中で最も初めに考えなければならないことが、「真実」ということでした。真実は一つ、この一つゆえに、客観性があり信頼ができ、多数の人がこれをよりどころにして意志を結集することができ、また相互に直接関係のない人たちを信用という紐によって結びつけることができます。しかし「真実」だからといって、直ちに行動に移せるものでもありません。それを決定する原理として、「公平」「好意と友情の強化」「有益」の原則がでてきます。これら四つの規準に照らして、絶えず自分の行動を確かめ反省しながら会社の経営をおこなえば、全社員が一丸となることができるのではないかと確信しました。幸いにして四人の重役が宗教上の宗派は異なっていましたが真面目な人たちで、このアイディアに賛成し協力してくれました。このようにして、出発点においては銀行から多額の借金がありましたが、10年後には、百万ドルの配当金を株主に出せるまでに発展しました。この「四つのテスト」は、最初はテイラーが所属するシカゴ商工会議所の会員に対するモットーとして配布されていましたが、後に彼が、シカゴクラブ会長を経て、RI会長に就任するにあたって、「四つのテスト」があまりにも素晴らしいので、全世界のロータリアンの職業奉仕の指針にしたいという声があがり、彼がRI会長に就任した1954年に、その版権がロータリーに寄付され、今日にいたるという経過をたどっています。

「四つのテスト」は世界各国の言葉で翻訳され、広く活用されていますが、その位置づけに関しては「「いかなる意味においても規則として取り扱われてはならない」と規定されています。人間関係における高度の道徳的水準の向上を図り、それを維持するために、書簡箋や印刷物に使用することが奨励されていますが、販売や利益を増すための広告と結びつけることは禁じられています。

 クラブ管理組織の改革によって、四大奉仕の一つとして職業奉仕部門が正式発足したのは1927年ですが、それ以前は1910年に設けられた企業経営問題担当委員会Business Method Committeeが職業モラル向上のための活動をおこなっていました。

 ロータリアン間の取り引きにおいて、「物質的相互扶助」が正式に禁止されたのは、1912年の「ロータリーの綱領」の改正によるものでした。その理論づけは1915年の「ロータリー倫理訓」および、1916年の「ロータリー通解」でなされています。ただしこれは、会員間の?相互扶助全てを禁止したのではなく、1912年に改正された「ロータリーの綱領」の中の「意見や商業取引上の方法を互いに話し合い、各会員の能率を増進すること」という条文からも伺えるように、「精神的相互扶助」を推進する方向に転換したことです。

 ロータリーの経営哲学を遵守している会員が、万一倒産するようなことがあれば、それはロータリーの哲学が否定されることを意味します。事業上の助言や援助を必要としている会員に、「精神的相互扶助」によって援助することで、助けられた会員の事業が安定化すれば、結果として、ロータリーが提唱する職業奉仕の理論の正しさが客観的に実証されることになります。さらに、援助を受けて立ち直ったその会員の職業奉仕の機会を拡大させ、それが地域社会に、よりよい効果をおよぼします。
ロータリアン間の取り引き関係に関する指針は、1933年に理事会決議がされ、その後、1979年に一部改正されましたが、現在も有効です。

《ロータリアン間の取引関係》
ロータリアン間の取引関係に関するロータリーの方針は次の通りである。すなわち、ロータリアンはその同僚ロータリアンから、他の事業家に対する場合よりも多くの利便を期待してはならないし、ましてこれを要求するようなことがあってはならない。ロータリアンが、取引関係にある他の事業家には普通与えないような特典を同僚ロータリアンに(ロータリアンであるという理由だけで)与えるのは、競争業者に対するロータリアンの義務に反することであるし、また、ロータリーの職業奉仕の原則に背くことである。いかなる場合においても、ロータリーの親睦を利便や利益を得る手段として利用することはロータリーの精神から遠く遊離したものである。

 1942年、RI理事会は「ロータリアンに対する事業上の援助と助言」を表明し、精神的相互扶助の具体的事例を成文化しましたが、1981年以降の「手続要覧」からは削除されています。

   《ロータリアンに対する事業上の援助と助言》
 ロータリーの親睦に確実な効果を与え、会員に有益な援助を与える機会を提供する手段としてクラブは次のことをおこなうべきである。
(1)事業上の助言や援助を必要とするロータリアンに内密にしかも親身な援助を与えるため、いろいろ異なった職業分類を代表する会員数名をもって委員会を作る。
(2)広く会員の利益のために、主として経済的な問題について討議するため「企業診断」あるいは「討論会」を開いて会員の利益をはかる。(理42−43)

 1948年にRIから発行された「奉仕こそわがつとめ」は、1949−50年度RI会長パーシー・ホジソンによって書かれた職業奉仕の解説書であり、過去のロータリー運動の中で取り上げられた職業奉仕の具体例を豊富に盛り込んで、職業奉仕を実践するにあたって、ロータリアンが取り組まなければならない課題を、項目別に問題提起しています。なお、パーシー・ホジソンは自分が会長を務める年度の奉仕理念をわかりやすく示すための方法として、今日のRI会長テーマの原型ともいうべき目的を掲げました。その最初のテーマが「奉仕こそわがつとめ」です。

 1987年、RI理事会は「職業奉仕に関する声明」を採択しました。この声明によって、ロータリアンが個人でおこなう職業奉仕活動に、クラブレベルの職業奉仕活動が加わることになりますが、ロータリーの奉仕哲学を帰納した結果導かれる職業奉仕概念とは大きな矛盾が生じてきます。

 クラブ例会で会得された高い職業倫理は、まず自分の職場に反映され、その考え方で事業を営めば、必ず事業が発展することを、自分の事業所をその例として示すことによって、業界全体にその理念を波及させなければなりません。ロータリーでは、この理念に基づいた毎日の職業活動のことを職業奉仕の実践と呼んできました。ロータリークラブは一業種一人の会員によって構成されていますから、会員の数だけ、職業奉仕活動の具体例があるのです。「職業奉仕に関する声明」における「クラブの役割は、たびたび職業奉仕を実践してみせることによって」と記載されている部分については、ロータリアンが自分の職業奉仕活動の実践例を示すことができても、現実に職業活動を営んでいないロータリークラブが、職業奉仕活動の実践例を示すことは不可能です。

 そ?の他クラブがおこなう活動例として、就職相談、職業指導、職業情報、職業活動表彰、さらには優良従業員表彰や職場見学などがあげられていますが、これらは本来の職業奉仕の概念とは大きくかけ離れた次元のものであります。むしろロータリークラブがおこなう役割は、会員に職業奉仕の心を育み、職業モラルを高めるための方策を考え実施することにあります。クラブそのものが職業奉仕の団体活動を実践することはありえないという結論に達します。

 ロータリーの唱える職業奉仕こそ、二十世紀における最も進化した職業人の倫理基準であるといわれています。自分の職業に真摯に取り組むことは、別にロータリーの専売特許ではなく、それを実行している人は数多くいます。ただ、ロータリーの職業奉仕が他の類似の思考と異なる点は、それがクラブ例会におけるロータリアンの発想の交換を通じて理論が構築され、それを信奉したロータリアンの実践によって、その結果が実証されていることにあります。

 かつて、「眠っているときの奉仕」というテーマをあげた人がいます。眠っているときでも脳は活動しているから奉仕を考えることは可能であるという結論は、いささか極論だとしても、ロータリアンの心構えは、職業人としての生活や例会時間以外でも全てのことがらをロータリー哲学に照らして行動することにあります。一般の社会生活を営む基準として、また、選択や決断に苦しむとき、その思考や判断基準の根底にロータリー哲学をおくことにこそ、ロータリアンに許された特権であり、ロータリーの原則にしたがってとった対処がきっと全ての問題を円満に解決する方策になるはずです。

 初期ロータリーにおける一般奉仕概念の集大成を収録した小冊子が、1916年に出版された、1915−1916年度国際ロータリークラブ連合会の理論教育Philosophy and Education委員長ガイ・ガンディカー Guy Gundaker がまとめた[ロータリー通解] A Talking Knowledge of Rotary です。 [ロータリー通解]は32頁から成る小冊子で、1916年5月号から7月号までのThe Rotarian誌に掲載された論文をまとめたものであり、1916年7月に開催されたシンシナチ大会で採択認証を受けて、クラブ管理運営のテキストとして発刊されました。それまでは、ばらばらに行われてきた、各クラブの運営や管理をまとめ上げて標準化する基準を作ったことと、サンフランシスコ大会で採択された[全分野の職業人を対象とするロータリー倫理訓]を掲載することで、ロータリーの目的をめぐる奉仕か親睦かの論争に一応の区切りをつけ、職業倫理の高揚を前提としたロータリーの一般奉仕概念を確立し、初期ロータリーの思考を体系的に総括したものと言うことができます。

[ロータリー通解の内容]
◎ロータリー精神
◎ロータリー教育プログラム
◎ロータリークラブの効用と目的
◎ロータリアンの為すべき事
◎ロータリークラブの会員に対する義務と責任
◎ロータリアンの自己の職業と社会に対する義務と責任
◎ロータリー宣言
◎全職業人に対するロータリー職業倫理訓
◎ロータリークラブ

 [ロータリー通解]の本文から、ロータリー運動の目的と、クラブ管理に関する項目の幾つかを紹介します。

****ロータリークラブの効用と目的****
 ロータリークラブは事業または専門職務の各々の職種から選ばれた者によって構成され、次の目的を達成するために組織される。
1.会員個人の向上。
2.理想と現実の両面における、会員の事業の向上。
3.会員の業界または業種の全体的な向上。
4.会員の家庭、町、州、国、ならびに社会の全体的な向上。

****会員個人の人格の向上 ****
 各会員に対?して、ロータリーは次の活動を要請する。
1.企業経営の経験を生かして、視野を広げること。
2.新しい境地に思いをはせ、心に活力を与えること。
3.他人に奉仕する気持ちをよみがえらせること。
4.素晴らしい将来の可能性をめざして努力すること。
5.人々の指導者となること。

****ロータリークラブ****
◎毎週一回、昼食会または夕食会に集う。
◎会員は地域社会における事業および専門職務の各職種の中から、積極的な代表者一名で構成されるという、独特のプランを採用している。

**** 綱   領 ****
◎あらゆる正業の価値を認め、その職業を通じて、社会に奉仕する機会を与えられたものとして、各会員の職業の品位を高めること。
◎事業と専門職務の職業倫理を高めること。
◎アイディアを生かし企業経営を改善して、各会員の実力を増大させること。
◎友人や広く社会全体に奉仕しようという、各会員の夢が実現するように励ますこと。
◎奉仕の機会と成功への手段として、学問的な知識を高めること。
◎地域社会の公共の福祉に関する各会員の関心を高め、公共的、社会的、商業的、工業的開発について他の人々と協力すること。

**** 特   典 ****
◎持つべき友が得られること。
◎純粋で健全な良き友情が得られること。
◎誠実で頼りがいある友人が得られること。
◎他の人々の仕事や問題や成功に関する啓示がうけられること。
◎効果的な経営方法の教育がうけられること。
◎友人や広く社会全体に奉仕しよういう、あなたの夢が実現するように励まされること。
◎知己を広め、あなたとあなたの事業への信頼の念によって企業上の利益が得られること。

**** 義   務 ****
◎定期的に例会に出席すること。
◎会費を確実に支払うこと。
◎依頼されたら、あなたの役割を果たすこと。
◎大きな心と寛大な精神を持つ人間であること。  
 エネルギーと行動力のある人間・・真の人間・・それがロータリアンである。

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