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奉仕の拡大 -国際奉仕-

 全世界にロータリーが拡大していったちょうどその頃1914年に第一次世界大戦が勃発しました。アメリカがドイツに宣戦布告をしたのが1917年でした。このような状況下で、イギリスやアイルランドのロータリークラブは、ヨーロッパ各地で傷ついた兵士の慰問や、避難民救済などの事業を手がけるようになりました。当時、国際奉仕の概念がロータリーに存在せず、社会奉仕の一類型として奉仕がされていました。一方シカゴクラブは、ドイツへの宣戦布告後、従軍兵士の慰問等の諸活動を企画立案するために、戦争問題担当委員会ができました。この委員会は兵士の激励や慰問だけでなく、ドイツ系アメリカ人への国内での虐待に対する救済もおこない、人類愛に根ざした奉仕活動をおこないました。このようにして、ここに国際奉仕の一分野が開かれました。

 さて、第一次大戦がもたらした大きな荒廃、不幸は、世界の人に二度と同じようなことを繰り返さないという願いとなりました。そして、ロータリーの奉仕の理念の追求がもたらした重大な成果は、国境を超えた奉仕活動が戦争を防止し、国際親善のために有意義なものたりうるという発見でした。国際奉仕の概念が明確にロータリアンの意識にあがったのは、1919年のソルトレイクシティ大会のことでした。1921年のスコットランドのエジンバラで開催された国際ロータリー大会では、国際奉仕の目的が「世界平和」の樹立であるとの自覚が生まれ、このことを綱領に明文化すべきことを決議し、1922年のロサンゼルス大会で、ロータリーの綱領の中に、国際奉仕に関する部分が明確に規定されたのです。

 「奉仕の理想に結ばれた事業と専門職務に携わる人の世界的親交によって国際間の理解と平和を推進すること」
では、国際奉仕にはどういうことが考えられるのでしょうか。まず第一に、諸外国の事情を理解し、外国ロータリアンがその奉仕活動の範囲内において、相手国民のためになることができないかというところから思索が始められなければなりません。ここでも、社会奉仕の場合と同じように、ロータリークラブでできないようなプログラムに手をつけるべきではありません。国際間の問題というものは一つのロータリークラブの財力をもってしては如何ともしがたい要素をもっています。この場合には国家とか赤十字社等に依存するほかないと考えます。それではどのようなことができるのかというと、たとえばニュージーランドのニューマーケットクラブは、そのクラブの財源の中の一部をインドの貧民救済用ミルクにして毎年送っているし、第二次大戦後にアメリカのクラブが敗戦国民に対して、図書、衣料等の救済物資を送ったこともあります。また、国際奉仕が国家またはその他の団体によっておこなわれている場合、ロータリークラブはこれを側面から援助することができます。

 第二に、国際親善と友好はしばしば国家間の会議の中から生まれる場合があります。ここで困難な問題は、ロータリーは一切の政治上の論争の圏外に立つべしとする大原則との関係をどうするかということです。国際ロータリーは理事会の決議をもって次のように宣言しています。

 「国際ロータリーは、多数の国に存在する幾多の見解をもつクラブから成り立っている。故に政治的問題に関しては、国際ロータリーによってなんら団体行動をとったり、意見を述べるようなことはしない」

 しかし国際理解と親善の確立に関して、国家と国家の代表に話し合いの機会を提供することはできるでしょう、まさしく話し合いの重要性はロータリー運動の中核的要素であって、話し合えば、人と人とはおのずから相和するのです。このようにして、政治問題に口をはさむことなく、国際紛争を惹起しそうな問題についての国際会議の設定をロータリークラブが主催し、その政治的論争の可否については言及しないという奉仕活動の分野が存在します。「あなた方にはそれぞれの言い分があるでしょう。その言い分をつき合せて、理詰めで話し合ったらどうですか、場所と会場設営はいたします」という態度なのです。

 国際奉仕の分野で断然頭角を現しているのが、1917年の「ロータリー財団」の設置です。これは、当時国際ロータリー会長であったアーチ・C・クランフの提唱によるもので、国際理解と、親善増進のための基金の設定をおこなうことになり、ミズリー州のカンサス・シティクラブが26ドル50セントの最初の献金をしたことに始まります。これが1928年のミネアポリス大会になって、5739ドルに達し、現在のロータリー財団となり、種々の学生の国際交流の援助金支給をおこなっています。

 ロータリー財団の目標は、国際レベルの人道的、教育的プログラムを通じて、世界理解と平和を達成することであり、これらのプログラムに対して資金を提供することを目的としています。ロータリー財団は、国際ロータリー理事会の下部組織として、主として数名の元国際ロータリー会長によって構成される委員会が、世界各国のロータリアンからの寄付金と国際ロータリー理事会が国際ロータリー大会の決議によって、割り当てた国際ロータリー余剰金とをもって構成する寄付行為であって、委員会はこの基本財産を運用し、その一部を博愛、教育、慈善、学術研究の目的のために支出します。これが画期的な事業を起こしたのは、1947年ポール・ハリスの死後、世界中のロータリアンが彼を追悼して寄付を寄せました。そしてポールの偉業を記念して奨学制度を開始したのです。現在次のような8種類のプログラムによって目標の遂行に役立てています。(1)国際親善奨学金(2)同額補助金(3)研究グループ交換(4)保険飢餓追放および人間性尊重補助金(5)開発途上国で奉仕する大学教員のためのロータリー補助金(6)ロータリーボランティア(7)ポリオプラスプログラム(8)ロータリー平和プログラムです。

 今までおこなわれてきた国際奉仕の大多数は、国家と国家の紛争、すなわちその最大のものが戦争、を前提とした平和運動でした。したがって、第二次大戦が終結した直後に、第三次世界大戦に連なりかねない国際緊張が発生するや、ロータリアンの心痛もこの点に集中して、1951年の国際ロータリーが「世界平和樹立のための国際奉仕の8原則」を宣言したり、それの実践を解説した「平和への7つの道」という著書が出版されました。

 しかし、1960年頃になると、今日の世界には国家と国家との力の対立とは次元が異なる重大な問題が存在するという自覚が生まれました。そしてロータリー運動もまたその問題と無関係ではいられなくなりました。

 その問題は地球上に存在する富の格差から発生する問題です。国際経済学者の指摘によると、今日の地球上の富の70パーセントが、わずか30パーセントの先進国民によって独占されていて、この30パーセントの先進国民は、主として北半球に住んでいます。そして残りの30パーセントの富は、70パーセントの発展途上国民にしか与えられていません。しかもこれらの国にあっては、その富はごく小数の支配階級の手に握られている結果、一般大衆が人たるに値する生活が保障されるような富の配分は全くおこなわれていません。そのため、これらの国民は自治意識も低く、相互の連帯感の欠如から経済的にも社会的にも文化的にも自立することができません。他方、これらの国々における人口増加は目覚ましいものがあります。この状態が続けば、やがて世界中に食料危機が襲うことになりかねません。

 そこで、先進国民が自己の能力に応じて、自ら身を挺して、それらの国に出向き、そこの国民といっしょになって、産児制限等の公衆衛生知識、農業用灌漑技術、初等教育、自治社会形成、中小企業相談など諸々の分野で共同活動をおこなうような奉仕活動が必要になってきます。

 このような国際社会における広域的な奉仕活動は、ロータリーのような超国家的組織が必要となってきます。ただ、この種の作業の育成については、いくつかの段階での準備が必要でした。

 1963年のRI会長カール・ミラーは「組み合わせ地区」という制度を作り、世界中の地区と地区とを組み合わせ、その地区内のロータリークラブ同士に相互に文通をおこなわせ、互いに情報交換をおこなう内に、それぞれの問題をとらえて、国際奉仕の計画を実現させようとしました。さらに1967年のRI会長エバンスは「世界社会奉仕World Community Service」という新しい奉仕の実践活動を提唱し、全世界のロータリークラブに、地球は国家の対立を超えて一つの地域社会であるとの基本認識に立って、後進国民の援助要請を国際ロータリーに登録させ、これに先進国のロータリークラブが応ずるという制度を設けたのです。

 この世界社会奉仕のプログラムを推進する場合に、ロータリー運動の本質との関係で一つだけ気になることがあります。それは、この種の問題の提唱に夢中になるあまり、国際ロータリーが特定の事業の実施主体となりはしないかという問題です。国際ロータリーが本来もっている役割は、クラブ間の情報の媒体にすぎません。1979年にRI会長クレル・レヌーフが提唱した3Hプログラム(Health 保健、Hunger 飢餓追放、Humanity 人間性尊重)は全世界のロータリアンとクラブから一定金額の拠出金を求め、国連と連携してフィリピンのポリオの撲滅に協賛しようというものでしたが、全世界のロータリアンの約60パーセントの拒絶を受け、目的を達成することができませんでした。

 国際ロータリーは、全世界のロータリークラブが会員となっている連合組織体であって、その主要な任務は連絡調整機能であって、事業を提唱したり、実施母体になることはできない団体です。世界社会奉仕そのものになんら問題はありません。あくまで実施母体となるのはロータリアンまたはクラブであることを念頭においておく必要があると思われます。
現在RIが規定しているロータリアン、ロータリークラブの責務は以下の通りです。

《国際奉仕におけるロータリーの基本方針》
ロータリーの国際奉仕の目指していることは、奉仕の第4部門に表現されている;すなわち「奉仕の理想に結ばれた、事業と専門職務に携わる人の世界的親交によって、国際間の理解と親善と平和を推進する」(RI定款第4条;標準定款第3条)自由、正義、真実、宣誓の神聖、人権尊重は、ロータリーの原則に本来備わっているものであり、また、国際平和と秩序の維持および人類の発展に不可欠である。
国際奉仕は、概念上、次のような四つの一般的分野に分類できる。
1)世界社会奉仕活動
2)国際レベルの教育および文化的交流活動
3)特別月間と催し
4)国際的な会合

《個々のロータリアンの責務》
 ロータリアンは、それぞれ、奉仕の第4部門に込められている理想の達成に寄与するよう期待されている。各ロータリアンは、自国の忠実且つ勤勉な市民となるよう期待されている。各ロータリアンは、場所を問わず、個人として尽力し、視野の広い世論を作り出すよう助力すべきである。このような世論は、必然的に、あらゆる国の人々の間に国際理解と親善を増進しようとする政府の政策に影響を及ぼすであろう。
世界に目を向けるロータリアンは
1)愛国主義にとらわれず、自分が、国際理解と親善と平和を推進するという責務を共に負っているものとみなす。
2)国家的または人種的優越感によって行動しないようにする。
3)他国民と協調する共通の基盤を求め、これを育成する。
4)思想、言論、集会の自由、迫害と侵略からの解放、欠乏と恐怖からの解放を享受できるように、個人の自由を守る法律と秩序を擁護する。
5)どこかが貧困であれば、全体の豊かさを危うくすると認識し、あらゆる国の人々の生活水準を高めようとする措置を支援する。
6)人類に対する正義の原則を高くかざす。この原則は基本であり、世界的なものでなければならないと認識する。
7)国家間の平和を推進しようと常に努め、この理想のためには個人的犠牲を払う覚悟をする。
8)実践されれば、必ず豊かで充実した人生をもたらす。倫理的・精神的基本水準が存在すると認識しながら、国際親善の一歩として、あらゆる他の人々の信念を理解する心をかき立て、これを実践する。

《ロータリークラブの責務》
ロータリークラブは、政府や世界問題あるいは国際間の政策に影響を与えるような団体行動をとってはならない。しかし、個々の会員に対して、事実をわきまえた建設的な心構えをもつよう奨励しなければならない。
ロータリークラブで、討論会を開催して、公共の問題を論じても差し支えない。ただし、そのような場における一連の措置は、奉仕の第4部門を助長するものでなければならない。もし論争点のある場合には、双方の主張が十分に発表されることが肝要である。

 RIの方針としては、ロータリークラブが核時代や貿易などの国際問題を公平な立場で討論するプログラムを退けるものではない。これらの問題は、平和の追求という範囲内において真剣に考え、討議するにふさわしいテーマである。
ロータリークラブにおいて国際的な論題を取り上げる場合、論者に他国の国民を攻撃しないように注意してほしい。また会合において表明された個々の論者の意見に対しては、ロータリークラブは必ずしも責任を負うとは限らないことを明らかにしておかなければならない。

 ロータリークラブは、国際問題に関係をもつ特定の計画に関するいかなる決議をも採択してはならない。ある国のクラブから他の国のクラブ、国民あるいは政府に対して何らかの行動をとることを要望してはならないし、また、特定の国際問題の解決に関する計画案や意見書を配布してはならない。

 ロータリークラブが存在する国家間の関係が緊迫している場合には、悪意や誤解を増すことがないように、関係国および他の国々クラブは、細心の注意を払わなければならない。
ロータリークラブとロータリアンは、なお一層の努力をして、世界中の人々の間に理解と親善を奨励・助長するよう要請されている。常にRIの所定の方針を守ること、また、誤解を生じ、悪意を生み、平和達成と維持への努力を後退させるような行動、発言、通信、文書は躊躇することなく避けること。

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