トップページ > 淡路子どもの心研修会 > 「衝動的に「キレ」る怖さと、父性的に「切れ」ない怖さ」
 
こども心身医療研究所 冨田和巳

◎演者の立場:治療者(小児科医)として患者を診る、相談に乗る立場としては「優しく/その人の立場に立って」対応するが、現代日本社会の子どもを総論的に語る場合は、彼らを「これ以上、甘やかしてはかえって不幸にする。甘やかされた子どもが成人になれば国が滅びる」という立場をとる。

◎現代日本社会の子どもに優しい・時に迎合しているとまで思える風潮−表面的美辞麗句で「耳に心地よい」言葉を発している−の中で、種々の問題解決を図ろうとしている限り、何らの解決/改善/予防もできない。このことは現状(学級崩壊の出現・不登校激増など)が見事に証明している。

◎物事は根本を見つめる/信言は美ならず、美言は信ならず(老子)/厳しい話に耳を傾けて欲しい

講演の要旨とKey words:
・衝動的に「キレ」る怖さと父性的に「切れ」ない怖さ! (母性社会・父性社会の認識)
・三つ子の魂、百まで―この諺が誤解されている現代/諺を作った古い日本人の智恵の巣晴らしさ
・羹(アツモノ)に懲(コ)りて膾(ナマス)を吹く―滅私奉公⇒滅公奉私になった敗戦後の日本の悲劇
・蛙の子は蛙/氏より育ち/鉄は熱いうちに打て/栴檀(センダン)は双葉より芳(カンバ)しい―諺の真理
二面性/母性性・父性性/家庭教育/ほぼよい(進歩的の怖さ)
自己表現と対人関係/バーチャルリアリティー(仮想現実)/厳しさの無い優しさの蔓延
 
1.子どもの問題の基本は


@ 自己表現のできない⇒対人関係の学習ができていない子ども・大人(社会性の欠如)の激増
A 表現の拙さが逸脱行動(非行・不登校・犯罪)/身体化(心身症)/心理変化(神経症)
B 年齢・素因によって個々に表現は異なるが、基本的にはストレス表現の様式が異なるだけ


2.現代日本社会の子どもの問題を考える(社会の中での子ども)

@ 社会だけに問題があるように見えるが、個々の子どもの素因を考えなければならない
A 社会が悪いから子どもが悪くなる(ある程度は、正しいが)⇒子どもは悪くない(誤り!)
B 社会は民族の歴史から来るものと、現代がもたらしたものの複合⇒共に厳しく検証すべき!
  地勢的環境が作ったもの―母性社会⇒子どもに優しい社会⇒子どもが幸せ/不幸の両面
  時代環境が作ったもの―戦後“民主主義”⇒わがまま・気まま/恥を知らない人間
  物質文明の隆盛 ⇒欲しいものが手に入る/我慢できない
  ⇒バーチャルリアリティー(仮想現実)時代
◎ 歯止めの無い・限度を知らない優しさは「迎合の時代」「媚びる時代」⇒ボーダレス時代
C 教育の凄さ・怖さを認識する
  ←「国を滅ぼすのに武器は要らない、教育をダメにすれば国は50年で滅びる」〔至言〕
  をわが国は実践してきたのでは?


3.現代日本社会を理解し/認識するために

@ 文化・宗教・歴史はその国の自然環境(自然観)と密接な関係がある(日本の特殊性)
      自然と共存する日本と、自然を征服する西洋の決定的な違い
A 母性社会・平等・集団主義の日本と父性社会・差別・個人主義の欧米との決定的な違い
B 世界を席捲したアングロ・サクソンの厳しさ・凄さを認識して、何を見習うべきか?
C 歴史は複雑怪奇。単純な母性的思考/戦勝国の価値観/被害者側の価値観で見てはならない
  暗黒の江戸時代なのか、心豊かで穏やかな時代なのか?−敗戦後の教育は何を教えたか
  敗戦後に“インテリ”はなぜ「反省・謝罪しなければ人に非ず」と盲信しているのか?
  (単純な諺―勝てば官軍/喧嘩両成敗/盗人にも三分の理―を思い起こせ!)
  台湾の歴史教科書と日本・韓国・中国の歴史教科書の違い/英国の違い
D 日本人は戦争を「道徳」で考え「個人の良心のレベル」で答えを出そうとする。これはほとんど宗教である(日下公人)
E 民主主義の「“善い人”ごっこ」を続けたい人々が多すぎる
◎ 和魂漢才⇒和魂洋才の英知と林 秀彦の言う《⇒洋魂洋才⇒洋魂無才⇒無魂無才》の惨状
◎ 母国、母校と「母」の付く言葉(もの)を悪し様に言うのは人間の自然感情に逆らった思考
◎ 世界で一番民主的・個人主義の米国で、大統領が暗殺され、選挙結果が直ぐに出ない現実。更に家庭崩壊と子どもの悲劇が最も多く出現している現実を知らなければならない


4.子育ての基本(家庭教育の重要性)

@ 教育は誕生直後から、母親によって始められている/始めなければならない
   授乳など赤ちゃんの世話が教育の第一歩―自己表現と対人関係の基本が作られる
   身体に所属し、心の素になる感覚を大切にする(これこそ本物の「心の教育」である)
A 「ほぼ善い母親(Good enough mother )」の意味することを理解する
  「過ぎたるは及ばざるが如し」の教えをかみ締める.進歩が行き過ぎた時代の怖さ
B 家庭教育で何が重要なのか(家庭は母性原理が必要条件/父性原理が十分条件)
   父性原理を備えた父親が日本の家庭に存在したか/敗戦で男が弱くなったのではない
   最も重要なのは「父性的」な父親の存在(大黒柱)  厚生省のポスターの問題!
   家庭の基本は母性の豊かさ⇒父性的思考の重要性(母性と父性のバランス)
   母親(哺乳類)の歴史は2億年,父親(人類)の歴史は500万年
   日本は世界でも類のない母性社会であることの「善さ」と「怖さ」を認識する
C 両親が己の両親から自立している−自分たちの育ち方を考える
  可愛い息子・娘のままでは子どもの父母になれない/母性社会・日本の悲劇
D しつけの重要性が判っていない:「世の中には理屈抜きでしなければならないこと/してはならないこと,   損をしてでもすべきこと/してはならないことがある」が基本
  親は「嫌われる」ことも重要な仕事である(本当に子どもは嫌っていない!) 
E 家庭は古い価値観が大切で、“先進的”に全面的信用を置かない/諺の真理に気付く
  民主主義・個人主義・フェミニズムの先進国・米国の家庭と子どもの悲劇から何を学ぶか!
  フェミニズム・ジェンダーフリー運動・思考が日本の家庭からも、母性を無くす方向に作用
F 教育を他に委ねてうまくいくと考えている―先進国共通の教育を滅ぼす思考
  親が自らの手で子育てをせず,うまくいかないと幼稚園・学校・社会のせいにする
  預けておけば子どもが育つと錯覚/「判らないことは専門家に頼ろう」は子育ての放棄
G 理想と現実の比率が自分たちの家庭・養育ではどの程度か判っている
  例えば、民主主義も才能も共に理想と現実を認識しないと失敗する
H 現代日本社会の問題(環境)や物事の本質を見る目をもつ
  マスコミ(第4の権力)主導の表面的現象非難に影響されない.単純に基本を先ず考える


5.幼稚園など幼児集団教育・学校教育を「よく」するには


地域社会・大家族が滅び、バーチャルリアリティー(仮想現実)時代の現代日本社会で、子どもの自己表現と対人関係を学ぶ場は、学校にしか残されていない。だから学校ほど大切な場所はない。他に替わるものがない以上、学校の表面的現象で非難ばかりしている現状を改めなければならない。
@ 幼稚園は家庭教育の是正をする場ではない(家庭教育の代わりをしてはいけない)
A 学校は知的教育をする場であると認識―家庭教育の後始末をする場でない
B 幼稚園や学校にすべてを任せて,できないことに文句を付ける親の身勝手さを無くす
C 教師を尊敬する/幼稚園・学校は聖域である(非日常の世界―特別の価値観がある場所)
D 教師の実行すべきこと―尊敬に値する人格を備えるように必死の努力(独善でない信念・勇気・責任・義務・決断そして愛情をもつ)/先輩の過ちを改める(過ちて改めざる、これを過ちと言う)―上記を持てば、危険を背負う/理不尽な非難が浴びせられる危険性―
E 敗戦後の「労働者宣言(教育の尊厳性を無くした)」「母国を悪し様に言う(戦勝国の価値観)」「欧米の民主主義の履き違え」の3点への反省が無ければいけないのでは?
F 何とかして学校に原因・責任があるとしたい世間(親とマスコミ)の体質を改める
  このような状態にしたのは、誰か?なぜか?を真剣に考えるべき(特に教師)なのだが


6.子どものSOSをどのように受け止めるか

@ 子どもの素因を考える
あらゆる問題で、なぜ「子どもの素因に問題がないのか?」と考えないのか?
   単純で明快な重要度公式:素因⇒家庭環境《教育》⇒学校(集団社会)環境《教育》
     諺の真理:三つ子の魂百まで/鉄は熱いうちに打て/栴檀は双葉より芳しい
A 感受性の強い子どもが心・家庭・社会の歪みを身体症状で訴える
   多くは思春期に出現するが,幼児期でも出る場合がある
   感冒などと同じ身体症状・腹痛・頭痛・発熱で子どもは心のSOSを訴える
   適切に対応しないと,後年エスカレートして家庭内暴力や「死」にまで至る
   全体として何を訴えているのか,個々に何を訴えているのか?を考える
    〔全体は社会の問題であり,個々には素因が入ってくる〕
   非難・否定は奥底に流れるものを見失い,肯定は個々の解決を不可能にする
B すべての問題を一緒にして論じる愚(通低するものと、微妙に異なるもの)
   不登校/怠学/いじめ(ちょっかい⇒意地悪⇒リンチ)/学級崩壊を区別して!
C 幼児集団教育の場・学校の責任/親の受け止め方/相談機関・治療機関の対応の問題
   (1) どこかおかしい/自分の経験からくる感覚を重視する(保母・教師・養護教諭・管理職)
     (自信の無さ・責任逃れ・勇気の無さ・自己防衛など)
   (2) わが子に限って/認識の乏しさ/精神・心理への誤解(親の知性・社会経験など)
(3) 数の絶対的な少なさ(人材が乏しい)/医師以上に経験が必要な分野
学者・専門家の机上の空論/専門家の欠点が目立つ/素人でも専門家になる怖さ
(重視してこなかった(あらゆる分野で)ツケが今、混乱を招いている)
     (「そっとしておく/子どもを尊重/自由に/自主性の育つのを待つ」の美辞麗句)
 D 幼児期・低学年に注意し、学校でも早期発見できる問題
    自閉症・精神遅滞・注意欠陥多動症候群・学習障害など
    境界性格など精神病的疾患
診断の重要性と怖さ(レッテル貼りの功罪)
 E 基本は受容・共感であるが、「美辞麗句・“善い”ごっこ」的治療・指導はいけない


7.講演を理解してもらうための基本的知識


@母性原理の特徴
 1.包み込む(境界・区別の無い世界)/カオスの世界
 2.何ものにも代えがたいもの(哺乳動物では母乳が無いと生きていけない)
 3.母の腕の中で子どもは誰もが平等−能力・個性に関係ない
 4.子どもが腕の外へ出たがるのを阻止−子どもは殺される(冬彦さん・マザコン製造機!)
「母」国・「母」校−を徹底的に悪く・貶めることが教育的なのか?
アングロ・サクソン(英語)Mother country/Mother land
ゲルマン民族(ドイツ語)ではVaterland/Mutterland(boden)

A父性原理の特徴
 1.切る(境界・区別する)/分析の世界、最も大切な母性の弊害を「切る」
 2.子どもは能力・個性によって区別される−たくましく・よく生きるため
 3.早く・強く切ると子どもは死ぬ

Bなぜ,日本は母性社会か
 1.四面を海という強固な要塞に囲まれた安全な国(母の腕の中)
 2.豊かな母なる大地の国・農耕民族−皆仲良く,共同で!

Cなぜ,日本以外の国は父性社会か
 1.力で母国を守らないと,いつ近隣諸国から滅ぼされるか判らない
 2.旧ユーゴの泥沼の紛争を見よ!古くはドイツ・フランスの国境問題を見よ!
 3.太陽の当たらない,不毛の地(中央ヨーロッパ)−自然を征服・狩猟民族

↑淡路子どもの心研修会に戻る  
←BACK
 
Copyright (C) 2006-2015 Awaji Chuo Rotary Club All Rights Rserved.