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講師:目白大学 人間社会学部 心理カウンセリング学科
助教授  黒沢 幸子 先生



T.「解決/未来志向アプローチ」
 「解決志向アプローチ」と「ナラティプ・セラピー」(物語療法)の2つの方法論は、家族療法から発展し、昨今ではブリーフセラピーの代名詞ともなっている。特に私達は、問題を自ら表明しない児童期や思春期の子どもたちの事例経験から、「解決志向アプローチ」をベースにして「未来志向アプローチ」というべき方法論を実賎している。
 「解決志向アプローチ」は、「解決」に焦点を合わせたブリーフセラピーである。クライエントを批判的に見ず、人間の強さに深い敬意を示しながらダイレクトに解決を目指して治療を進めるものである。「解決志向アプローチ」は、問題に対する「例外」の概念を確認し、「ミラクル・クエスチョン」や「スケーリング・クエスチョン」等の革新的な方法を発展させてきている。これは、他の心理臨床理論をベースにしたり枝分かれしたものではなく、独自に、実際の数多くの臨床事例から「より短期で効果的かつ効率的」な方法として抽出されてきたものである。
 子どもの問題に治療的介入を行う際、子どもと治療者の関係性だけでなく、保護者や学校関係者らとの適切な連携が重要である。
 その点「解決/未来志向アプローチ」は、「問題」や「原因」に焦点をあてず、「解決」や「未来」の状態、およびそれに役立つ「リソース」(資源・資質)に焦点があてられるため、関係者が連携して子どものさまざまな問題に対応する際に非常に有効である。 

1)未来時間イメージの3水準
 第1水準は、「こうあるべきである」というもの。すなわち、「必要」「義務」としての解決像。「べき論」の未来イメージ。
 第2水準は、「こうなったらいいのに」というもの。すなわち「希望」「夢」としての未来イメージ。
 第3水準は、「当然こうなっているでしょう」というもの。「必然的進行」と呼べるような未来イメージ。
 私たちが欲しいのは、第3水準の未来時間イメージである。なぜなら、第1水準の場合、「こうあるべきだが、そうしたくない」「こうあるべきだとわかっているが、できない」となる。これは、自分自身とは調和しない外的な要請や内的な圧力(プレッシャー)によるもので、自己決定ではないものである。第2水準の場合、「こうなりたいのだが、それは無理である」等、「できない」という種類の言葉が、その後に続いてしまうことが多い。これは、文字通り夢物語として語るにすぎない。子どもたちは「べき論」にうんざりし、「夢・希望」に空しさを感じているといえる。第3水準の場合は、「当然こうなっているだろう」という子どもたちにとっての必然的な未来イメージである。「すでにそうなっている自分の姿」を観ることができれば、どうすればいいかはおのずと明らかになり、有効な道程を、選択し達成して行くことになる。これを導き出すのに有効な質問が、「タイムマシン・クエスチョン」である。

2)悩みを悩めない、悩まない子どもたち
 昨今の子どもたちは「悩み」を「悩み」として悩まない、あるいは悩めないと言われている。自分のなかにある不全感や葛藤を、「言語化」して表現し考える代わりに「行動化」や「身体化」という形で表現される。
 不登校の子どもたちに対応する場合、学校に行っていないことを直接の話題にすることは、その関係性を損なったり、子どもの心を再び閉ざさせてしまう恐れがある。あるいは彼ら自身、なぜ学校に行けないのか、行かないのか、もやもやとしてわからないといえる。
 また反社会的問題行動を起こしている子どもたちは、その問題行動を表面的には正当化していたり、問題だと認識していない状態であるため、それを問題視して取り扱うことは歓迎されない。仮にそれを止めさせようとかかわっても(説教となり)、彼らには問題意識がない(止める気がない)ため徒労に終り、その後の関係性までも切れてしまう。
 「タイムマシン・クエスチョン」は、“悩み”を“悩み”として悩めない、問題がなんであるのかわからない子どもたちへの対応の中から開発された。
 彼らの何かを問題視するのではなく、良いところややれていることを見つけては感心し、誉めることを繰り返しながら未来時間イメージを問う。「べきだ」の価値観にとらわれることもなく、「夢・希望」の単なるオプティミズムからも自由である、他者の手にも染まらない彼ら自身の「未来」を引きつける作業である。未来の「すでにそうなっている姿」を描いてもらうことが、子どもたちに変化をもたらすきっかけになる。

U.「問題の外在化」アプローチ
 「問題の外在化」は,「問題を本人および関係者から切り離して,外に取り出し,それを一種擬人化して扱うことにより,本人およびその関係者が,その問題への対処法を発見できるように援助する方法である」と定義される。
 「外在化」は,反社会的問題行動を伴う事例を援助する際に特に効果的である。子どもの問題行動に治療的介入を行う際,子どもとの関係性だけでなく,保護者や学校関係者らとの適切な連携が重要であり,対立構造に陥ることなく,治療チームを形成して対応に当たることが求められる。

1.子どもや親とのカウンセリングの基本
(1)子どもとのカウンセリングの特異点
 子どもと目線の高さを合わせ,面接の冒頭で,「ここに来たらどんなことがあると思って来たのかな?」と子どもに確認し,子ども自身が「何を,どのように,問題だと思っているのか」についてもきちんと聴く。そして,「ここでどんなことがなされれば良いか」あるいは「どんなふうになったらいいと思っているのか」について話し合い,そこから本人に合わせて話を広げ,子ども自身が治療における主体者になれるような同盟を結ぶ。
 2点目は,子どもたちの好む表現モードを使うことである。描画,動物の話,ユーモラスな面をもつメタフアー(“菌”やそれを退治する“儀式”),魔よけのお守りなどがそれにあたる。
 子どもは未来志向的な存在であり,自分自身で自分を導く力とユニークな方法とを驚くほど持っている。ただ,治療者(や親)の方が,治療的会話の良きホストになれないことが多いのである。子どもこそがゲスト(大切な主人公)であることを忘れがちである。

(2)親とのカウンセリングの特異点
 子どもの問題を抱えて,子育てに負担や困難を感じていない親はいない。親に対して治療的協同作業に入るためには,その大変さをねぎらい,良くやっている面を見つけて評価する。親に子どもをよりよく支えてもらうためには,親自身が勇気づけられる必要がある。親自身もケアされ,サポートされなければならない。そして,子ども同様,親の好む表現モード(言葉使いや価値観など)に合わせあるいはそれを尊重して対応する。
 もう一点は,面接の中で必ず親に「子どもの売り」を尋ねる。子育ての困難に打ちひしがれている親は,なかなか子どもの“売り”を見出せないが,この個性(“売り”)こそが,子どもの生きる力として,子ども自身を支えるものであり,親が認め伸ばしてやるべき資質である。


2.「問題の外在化」の進め方
(1)「問題」について聞く
 本人と問題を分けて扱うような質問の仕方を心がける。「本人が〜である,〜をしてしまう」と語られる問題を,主語を本人ではなく,問題に置き換えることが効果的である。
 たとえば,「本人がイライラして暴力をふるってしまう」という問題が語られたら,「イライラが,本人に暴力をふるわせてしまう」と言い換えるわけである。またその問題が生じていない時のことも,きちんと聴いておく必要がある。それにより,本人が問題にやられていない状況が確認でき,本人と問題との分離プロセスが促進される。
 この分離プロセスは,とりわけ暴力といった問題行動が認められる場合に重要となる。仮に問題が本人に内在化され,問題と本人が同一視されると,家族はそれを受容しようとも攻撃しようとも,結果は悲惨なものとなる。

(2)「問題」にニックネームをつける
 この分離プロセスを促進し,皆で共有しやすくするために,問題をメタフアーとして扱い,ニックネームをつける。ユーモラスなもので,本人の体験にフィットしたものであることが成功の条件となる。ここで,「悪いのは“そいつ”であって,本人も家族も関係者も誰も悪くない。問題は,どうやって“そいつ”をやっつけるかであり,そのための協力体制を皆でつくることである」と宣言する。

(3)“そいつ”への対応策を一緒に考える
 次にその分離・対象化された問題に,どう対処するかを探察するステップヘと移る。「どうやったら,“そいつ”を退治できるか」を問いかけ,「“そいつ”は,なぜ,どういう時に、戻ってくるのか?」あるいは「“そいつ”の『好物』,あるいは『苦手なもの』は何か?」をともに考えることによって,問題の発生状況を保護者や本人自身が検討できるように働きかける。

 

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