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従業員の自主管理権の確立

 第1に、企業内管理論であります。ロータリアン夫子自身の企業をどのように管理すればいいのか。まず従業員の関係があります。関係というのは目に見えないものであります。しかし、シェルドンは、人間というものは、みんな個体としてはバラバラだけれども、目に見えない紐でつながっているのだ、という理論を説いています。そこからロータリー理論を展開していくのであります。要するに、「他人なくして自分なし、自分なくして他人なし」、ということを、まずよく頭の中に入れておく必要があります。そういうことを頭によく入れた上で、企業というものを倫理的に見ていきます。法律論的には見ません。また企業というものを機能的に見ていきます。権限論的には見ません。

 これは、どういうことかと言いますと、企業の中には社長もいれば、部長もいる。課長もいれば、電話交換手もいるし、運転手もいれば、工員もいます。しかし、それぞれの人達が、上下の関係ではなくて、それぞれの役割を完全に果たすことによって、企業というものが円満に発展していきます。どれか一つが抜けてもだめなのであります。そういう意味で機能的にみていきます。すると社長が偉いというよりも、社長は社長という役割を担当している。電話交換手は電話交換手という役割を担当している。みんな平等対等で、どちらが偉いということはありません。

 これを権限論的に見ますと、また法律論的に見ますと、社長さんは会社のオーナーであって、その下に従業員がいて、従業員は、すべて雇用関係で会社とつながっています。ロータリーが企業内管理論を説くときには、このような上下関係の見方をしません。機能的に見ていくのであります。そして法律論的に見ないで、倫理的に見る。どうしても法律論的に見なければならないときには、倫理の裏打ちのある法律論を出そう。これがロータリーの基本的な考え方であります。

 企業というものは、利害の相対立する2つの人脈集団によって構成されています。一つは役員であります。もう一つは労働者であります。そしてこの二つの人脈集団は、相互に拭い難い不信感をもっています。特に従業員の方から役員に対する不信感が強いのであります。アメリカあたりでは、役員から従業員に対する不信感も相当あるようで、バカンスの間に従業員の仕事を全部チェックするために長いバカンスがあるというような冗談話もあります。このような不信感があれば、企業は円満に発展していかないのであります。

 そこで、ロータリーの職業奉仕論は、いかにしてこの不信感を拭い去ることができるか、を考えるわけであります。そのためには、企業の所得を明らかにする、即ち、経理の公開が大前提となります。そして、経理の公開をした上で、従業員への適正な賃金がいくらであるかという適正賃金論ができきます。経理を公開していない企業があったとしても、簿記や会計というものは一般に従業員が行っており、自ずとわかるものであります。社長が、今景気が悪いから今年のベースアップは何とか低くしておいてくれ、と言ったところで、後からみてみると、社長の愛人が従業員に入っていたり、いろいろ出てくるとますます不信感が強くなります。

 ある社長は、いろいろと良いことを言うのですが、経理を公開しない、そして自分は豪邸を建てる、ということになるとやはり従業員の方は不信感を大きくします。そういう意味で、経理の公開というものは、従業員の不信感を拭い去るためにどうしても必要になってきます。そしてその上で、適正な賃金を算定するという問題が出て来るのであります。

 しかしながら、一定の労働に対してどれだけの賃金を支払えば適正か、ということはほとんど計算が出来ないことであります。つまり組織体の総収入から割り出さなければなりません。そうなりますと適正な賃金というものは、相対的なものとなります。そのためにも、経理の公開というものが重要になってくるのであります。

 次に、利潤の適正分配ということが言われています。総売上から、税金を引き、人件費等の会社経費を引いた残りの利潤をどう分けるかの問題であります。普通は、三つに分けます。一番最初は、会社があってその利潤があるわけでありますから、法定準備金等会社に留保すべきものを取ります。その次に、役員報酬。役員の働きによってそれだけの利潤が出たのでありますから、役員報酬を取ります。そして最後に、株主配当。株主は会社のオーナーでありますから、株主に還元していく。これは、3分類法といって普通の方法であります。

 しかし、ロータリーの職業奉仕論は、もう一枚、従業員に対する配当を考えるわけであります。これはどういうことかと言いますと、最初に、ロータリーは企業を機能的に見ると言いました。従業員も役員も一生懸命自分の役割を果たしたために、会社の利益が出てきたわけでありますから、役員と同じく、会社の利益を生み出すもとになった従業員にもそれを還元しようということであります。

 これは非常に東洋的な、仏教の因縁論的な考え方であります。最近ではマサチューセッツ工科大学のドラッカー教授が同じようなことを言っておりますが、20世紀初頭にすでにこの考えをシェルドンが提唱しているのであります。
 ただ、ここで注意していただきたいのは、従業員の給与は最初に人件費として総所得から引かれております。そのために、この従業員への還元は経理上の処理が難しかろうと存じますので、計理士の先生とご相談の上実行して下さい。

 このように、経理を公開して適正賃金を支払い、利潤の適正分配を行えば、従業員の役員への信頼は高まります。

 三木クラブの宮崎三郎さんのお話を紹介しておきます。宮崎さんの会社では、給与体系を作るのは従業員であります。入社後の在籍年数毎に、6段階に分けて、その中から二人ずつ給与決定委員を選ばせて、その委員会で自主的に給与体系を作ります。そして社長に答申するわけであります。毎年この方法で給与を決定しますが、その委員には毎年違う人が選ばれるそうであります。その12人の給与決定委員は、一生懸命勉強して、今年度のベースアップはこれでどうですかという答申を、社長のところにもってくるのであります。その作ってきたものを、一度プロの経営研究所に見せたところ、とても素人が作ったとは思えない素晴らしいものだとの評価を受けました。今までただ一度を除いて、すべて従業員の答申通りに給与を決定しているそうであります。そのただ一度の例外は、オイルショックの時で、従業員の答申した給与が低すぎるので、社長が少し上乗せして決定したとのことです。そういうシステムでありますから、もちろん従業員の方は会社の総所得を知っておりますし、役員に対する信頼感も100%であります。そして隆々と発展しているのであります。これも職業奉仕論における、従業員の自覚を育てるいい例だと思います。経理の公開を前提に適正賃金を支払い、そして利潤の適正分配をする、そういうことをロータリーの職業奉仕は説いているのであります。

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