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従業員との信頼関係

 第3の柱となるものは、人間関係(human relation)であります。
 従業員と会社との関係は、従業員が一定の時間の労働を会社に提供して、それに対して賃金が支払われるものであります。民法623条に、雇用契約の定義があります。雇用契約というのは、当事者の一方が相手方に対して労務に服することを約束し、相手方はそれに対して賃金を支払うことを約束することによって成立する契約であります。ここで注意していただきたいのは、労働を提供すればいいということであります。労働の質は問われていません。良質な労働か、悪質な労働か、質のところまで法律は規定できません。つまり従業員は、朝の8時から夕の5時まで会社に居れば、給与をもらうことができます。前の晩に徹夜で麻雀をしようが、飲み歩こうが、二日酔いで仕事ができる状態でなくても、ともかく朝8時に会社に行き、5時まで居れば給与がもらえる。労働の質は法律上規定できないのであります。

 これに対して役員は、時間で計られた労働を提供しているのではありません。役員はまさに労働の質が大事であります。1時間も会社に出なくても、役員報酬を受け取ることができます。しかし、会社の発展に対して、役員は全責任をもっています。ということは、役員は24時間労働と考えることができます。いつも会社のことを考えていなければならない。そして会社に行くかどうかではなくて、いかに良質な労働を会社に提供するかが問題なのであります。

 適当に時間を費やすだけの従業員が多くいる企業は、当然発展しません。そこでロータリーの職業奉仕は、従業員といえども良質な労働を提供しなければならない、そのためにはいかに役員が従業員を教育するのか、ということを説いているのであります。会社にいるときはもちろん、アフターファイブ、5時以降の時間にも、従業員に生き甲斐を与えるような労務管理を行わなければなりません。5時以降は、法律上、従業員のまったく自由な時間であります。会社が一切介入することのできない、会社の懲戒権も及ばない完全に従業員の自由な時間であります。しかし、介入することができないからといって放っておいても良いかというと、先ほどのように質の悪い労働を提供されることになる。したがって、従業員自身が自由時間を健全に過ごすべき自覚を持つように教育することが大事なのであります。即ち、5時以降の時間が、翌日の労働の再生産のエネルギーになるような過ごし方をしなければならない、ということを各従業員が自覚するような労務管理をしていかなければなりません。そういう教育が必要なのであります。

 このような論理は、法律論からは出てきません。法律が規整出来るのは、労働の量だけであります。労働の質をよくするということは、倫理の問題であります。まさにロータリーは倫理の世界でありますから、倫理の問題として処理することができるのであります。

 従業員と役員とが同じ次元で心を通わせることが重要でありますから、例えば、若い従業員が夜学に通いたい時、非常に結構なことだから、また会社のためにもなることだからと言って、励ましてあげたり、時には奨学金も出してあげる。また、花嫁就業をしている女子従業員がおれば、お花やお茶を習わせてあげたりする。従業員の人生相談などもおこなって、精神衛生の問題を解決するとか、運動会や、団体旅行を計画したりして、常に役員と従業員が心を通わせるということが、人間関係形成上必要になってきます。そういうことをやっていると、企業が危機に瀕したとき、従業員のレイ・オフをしなければならない時に、従業員の方から、「社長、苦しいときはしょうがないから、私がよそで働きますよ。また盛り返したら呼んで下さいね」と言って、快くレイ・オフに応じてくれる。これは普段からの人間関係の問題です。法律上の雇用関係はレイ・オフによって切れますが、従業員との心の雇用関係は切れていないのであります。

 ある中小企業の社長さんの話でありますが、その会社では、若い従業員に一生懸命技術を教え込みます。そしてやっと一人前に育ったなと思ったら、よその会社にスカウトされて引き抜かれてしまう。何回も引き抜かれたので、もう若い子を育てるのはイヤだ、とその社長は思ったそうです。しかし、企業というものは、単に私的利潤だけを追求するのではなく、社会の教育機関としての自覚を持つべきなのであります。何回引き抜かれても社員を育てていく。引き抜かれた社員も、やっぱりもとの会社がよかったなと思うことが多いものであります。また引き抜いた会社は、さすがあの会社が育てた社員は素晴らしいと感じ、またそれが口コミで広まっていくのであります。だから引き抜かれたから育てるのはイヤだ、と目前の現象だけにとらわれずに、ロータリアンであれば、企業の社会的責任、社会の教育機関としての自覚を持って社員を育てていく。そのこともやはり職業を通じて世のため人のためということの一つの内容になると思うのであります。

 企業内管理論を通して言えることは、すべて不信感除去論、いかにして不信感を除いていくかということであります。従業員を育てる要諦は、従業員の働きに感謝し、そして慰労し、激励する、ということであります。そして従業員は60点満点説をとります。80点の従業員に育てなければならないと考えるよりは、60点でいいんだと考え、激励する。これが企業内管理論の要諦であると考えております。

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