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利益の適正分配

 次は下請関係であります。アダム・スミスが“Wealth of Nation”「国富論」を著しました。その第1章は、“Division of Labor”「分業」であります。人間は資本主義社会を発展させるために分業に分業を重ねてきたのであります。今日、どの企業も下請を使わない企業はまずないだろうと思います。分業に分業を重ねて沢山の下請を使う、孫請を使う。

 ところで、親会社と下請の関係をみると、力のバランスが崩れています。どうしても親会社の方が、強くなります。そういう力関係になると、一体どういうことになるのか。古代ローマの格言に、「ひとは人にとって狼である」とあります。人間ほど恐ろしいものはありません。強いものが弱いものを踏みにじっていきます。したがって、孫請、曾孫請と下の方にいくにつれて、仕事をしたって全然儲けがない。そういう形で、どんどん下が叩かれていく。そういう現象が起こってきます。これが、マルクス・レーニン主義が出てくる一つの原因となっています。

 例えば、交換価値をみてみます。1円の貨幣の交換価値は1円で、つまり1円の物と交換ができるわけであります。しかし1円を1万倍して、1万円にすると、1円の物を1万倍した物と交換できるかというと、もっとそれ以上の物と交換することができます。交換価値というものを、交換力という考え方でみますと、100万円持っている人と、1円しか持っていない人を比べると、100万円持っている人の方が、より価値の高い商品を買うことができるわけであります。これが、マルクスのいう「資本の論理は力の論理」なのであります。このアンバランスをマルクス主義は、権力、すなわち政治力で解決しようとします。

 ロータリーは倫理運動でありますから、倫理運動の立場から考えますと、権力を使うことはできません。ロータリーはそれを「徳」というものを1枚入れて、そのアンバランスを調整しようとするわけであります。
 そこで、二つの倫理原則を出すことが出来ます。

 第1は、利益の適正分配の原則であります。資本主義経済社会は自由競争が原則になっています。自由競争は、できるだけ効率的に作業をしようということから、見積を出させたり、競争入札をしたりします。その時に、力のバランスが崩れていると、強い者が弱い者に対して、値段をどんどん叩いてきます。ある一定限度を超えると、叩かれた方が裏切る権利を持ちます。叩いた方は儲かりますが、叩かれた方は泣くわけであります。そこで、「人を泣かせて、その上に自分の幸せを築くなよ」という原則が出てきます。自分のところだけが、儲かればいいというものではありません。相手も喜んでもらわなければならない。人を泣かせて、その上に自分の幸せを築くと言うことを、ロータリーの職業奉仕は厳に戒めているのであります。

 この点について、「四つのテスト」を提唱した、ハーバート・テーラーの話が残っています。彼は、倒産したアルミ食器会社の再建に乗り出し、十年後には一流の企業に育て上げたのでありますが、ある時、印刷会社と契約をしました。契約をした後、印刷会社の社長が家に帰ってみると、計算違いのために見積に誤りがあり、このまま契約通りに仕事をすると、かなりの赤字が出ることに気が付きました。契約を交わした後なので、今さらこれを変えてくれとは言えた義理ではないのだけれど、さりとて、みすみす損をすることが判っているのにまともな仕事ができるかどうか判らない。断られてもともとなのだから、損をしない程度に契約をやり直してもらうよう頼んでみよう。と思ってハーバート・テーラーのところへ行きます。テーラーはこれを聞いて、確かにそれは気の毒なことだ、しかし私の一存では決めることはできない、と言って取締役会にこれをかけたのであります。取締役会では、法律上契約はできあがっている、われわれは一銭も値切らないで印刷会社の社長の言う通りに契約したのだから、それを守ってもらおう、という意見が出ました。これに対して、テーラーは、「我々は『四つのテスト』を誓い合ったじゃないか。真実かどうか。真実はこれを履行すれば、相手の会社が損をするということだ。そしてそのことによって好意と友情を深めることができるか。みんなのためになるかどうか」と言って役員連中を説き伏せて、印刷会社の損をしない程度に契約をやり直したのであります。その話が広まって、ハーバート・テーラーの会社は大したものだ。あの会社と付き合っていれば、損をすることはないよ、という信用ができあがって、十年後には一流の企業に成長していったのであります。これは、利益の適正分配、自分のところだけが儲けるのではなく、下請、同業者すべてが共存共栄できるような経済体制を組んで行け、ということをロータリーの職業奉仕は倫理面から説いているのであります。

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