トップページ > ロータリー講座 >職業奉仕講演集 T> 賄賂を贈ることなかれ
 
賄賂を贈ることなかれ

 第2の倫理原則は、賄賂の禁止であります。力のバランスが崩れていくと、どうしても弱い者が強い者に賄賂を贈ることになりがちであります。これは下請関係だけでなく、取引関係でも需要と供給のバランスが崩れると、プレミアムという形で賄賂が横行します。賄賂をロータリーは厳に戒めているのであります。

 日本のロータリーでも有名な話があります。昭和6年日本の二代目のガバナーである横浜クラブの井坂孝は、ガバナー月信第1号の巻頭言に、「自分は日本全国を統括する国際ロータリー第70地区のガバナーに就任するにあたり、全国のロータリアンに拳拳服膺していただきたい3箇条がある。それは、第1、ロータリアンたる者は、約束を守るべし。第2、ロータリアンたる者は、賄賂を贈ることなかれ。第3、ロータリアンたる者は、いたずらに慈善事業に浮き身をやつすことなかれ」と提唱したのであります。

 第1のロータリアンは約束を守るべし。ロータリアンはすべて職業人でありますから、これは当然、契約的正義の実現を説いております。もちろん、それ以外でも時間を守るなども含まれていますが、すべての人間関係で、信用を得ていくためには、約束を守らなければならない、ということを説いているのであります。

 第2の賄賂を贈ることなかれ。ロータリーでいう賄賂は、犯罪性のある賄賂だけでなく、もっと広い意味で使われています。収賄罪や贈賄罪などの犯罪性のある賄賂は、受け取る側が、公務員という身分をもっていなければなりません。私企業の社長がいくら賄賂をもらっても、法律上は問題がありません。

 ところが、ロータリーは、倫理運動の立場から、概念を広くし、正当な労働の投下によって得る賃金、ないしは正当な報酬以外の一切の金品の授受は、これを全部賄賂と看做しています。したがって、ここで問題となるのは、盆暮れの付け届け、中元歳暮であります。ロータリー的にはこれも賄賂となります。しかし、ロータリーは第2の原則を用意しております。それは公開の原則であります。それが賄賂であるかどうかを判断するために公開しなさい、と説いています。ロータリアンであれば例会に出て、「昨日こんなものをもらったんだけれど、これは賄賂になるのかね」と聞いたところ、他のロータリアンが、「そんなものは社交的儀礼だからもらっとけよ」と言えば、これで賄賂性がなくなります。公開して皆の意見をきくことによって賄賂性が消えたのであります。つまりロータリーは、心にやましいことがあれば、なかなか公開できないだろう、したがって人に堂々と公開できるものは賄賂とは言えない、と説いています。

 ロータリーの世界では、この賄賂を贈るなということは、職業奉仕の一つの柱として考えられていました。井坂パストガバナーが何故このような提唱をしたのかと言いますと、4年前の1927年スイスのジュネーブで世界経済会議が行われました。その時に、ロンドンクラブのシドニー・パスコールが、業務上の不当な慣行の撲滅を提唱したのであります。井坂ガバナーの時の国際ロータリー会長がこのパスコールでありました。そのために、井坂さんがこのような提唱をしたのであります。

 ついでに、井坂パストガバナーが提唱した第3の「ロータリアンはいたずらに慈善事業に浮き身をやつすことなかれ」について説明しておきます。井坂パストガバナーのロータリー観というのは独特なもので、職業奉仕を中心としたロータリー観でありました。井坂さんは、「ロータリーの神通力は、実業の世界にのみ発揮されるべきである」と言いきっておられました。これに感動されたのが、神戸クラブの直木太一郎パストガバナーであります。井坂パストガバナーの思想の系譜を継がれたただ一人の人であろうと思います。その思想は、まず職業奉仕に徹して、自分の企業をどんな不況期にも潰れない強靱な体質の企業に作り上げた上で、しかる後に余裕があれば、社会奉仕、国際奉仕に手を出すべきであって、ロータリーが、ロータリー財団をはじめ、ローターアクト、インターアクト、世界社会奉仕等々あまり手を拡げすぎると、ロータリーが崩壊する。自分は、ロータリーの神髄に忠実であるが故にロータリー財団に寄付しない、と言って、生涯ロータリー財団に寄付をしなかったロータリアンでありました。

 「いたずらに慈善事業に浮き身をやつす事なかれ」、なにも慈善事業をやるなと言っているのではありません。しかし「いたずらに」「浮き身をやつすな」というところがポイントであって、「一番大事なのは職業奉仕ですよ」と言っているのであります。

 冒頭でも話しましたように、弱者救済、困っている人に援助の手を差し出す。これは大変結構なことであります。しかしこれはロータリークラブ以外の人でもできる。むしろこれは、ロータリー以前のことであります。人間として、地域社会に生を享け、地域社会でお世話になっている。その地域社会の一員としての義務として弱者救済は為さなければならないことであります。
 弱者救済も世のため人のための行為ですありまが、ロータリーでなければ出来ない世のため人のための奉仕ということになれば、我々は職業人でありますから、職業を通じて、世のため人のためになること、つまり、賄賂の禁止の提唱など、職業を通じて、その業界を浄化していく、地域社会を浄化していく、これがロータリー的な世のため人のための奉仕であると思うのであります。

↑職業奉仕講演集Tトップ  
←BACK
 
Copyright (C) 2006-2015 Awaji Chuo Rotary Club All Rights Rserved.