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いかに職業倫理を昂揚できるか−哲学的な意味の集大成−

 ロータリーの本質はなにかと問われたとき、これを手短に答えるのは非常に難しいことです。世の中には奉仕クラブと称する団体がたくさんあります。「ロータリーとライオンズはどこがちがうの?」という簡単な質問にも、両者の違いを詳しく1時間くらいお話しすれば、ある程度ご理解いただけるとしても、それを5分か10分で説明することは非常に難しいことです。
  「ライオンズはお金がかかりすぎるからロータリーに入った」「社会的にロータリーの方が有名だから入った」と冗談めいて言っているのを聞くことがあります。ライオンズ、キワニス、女性のクラブでは、ソロプチミスト、ゾンタ、いろいろな奉仕クラブがありますが、ロータリーはこれらのクラブとは本質的にちがった哲学を持っている団体なのです。
 これは決して、どちらが良いとか悪いとか言う問題ではありません。ロータリーは何が違うのかという本質的な違い、すなわちロータリー哲学の特徴を、述べたいと思います。
 結論を最初に申し上げると、ロータリークラブとは一人一業種で選ばれた職業人の団体であり、職業を通じて各の会員が奉仕をする、いわゆる職業奉仕を主な目的としていることが大きな特徴であります。

 ロータリーはどんな奉仕活動をしているのか。皆さんがクラブレベルや個人レベルで実践している奉仕活動を思い浮かべて下さい。ロータリー財団に寄付をし、それによってたくさんの留学生の方々に勉強するチャンスを与えています。勉強するチャンスを与えるだけでなく、世界親睦、国際親善という機能も併せ持っています。
 しかし、そういった活動はロータリーのみが行っている独特な活動とは言えません。皆さん方の町でも、姉妹都市協会とか、国際交流協会があると思います。また、いろいろな団体が国際親善の活動や、留学生を送り出したり受け入れたりする活動をしています。だからこの活動はロータリー独特の奉仕活動ではないと言うことがわかると思います。
 また、いわゆる発展途上国に対する人道的な援助−これもロータリーが力を入れている活動の一つですが−をやっている団体は他にも沢山あります。NGOやNPOの団体などその目的のために設立されている団体が沢山あります。したがって、この分野の活動もロータリーの特徴とは言い難いということになります。
 地域社会に対する奉仕活動も同じことが言えます。阪神・淡路大震災の際、ロータリーは地域社会に対する奉仕活動の機会としてとらえて、いろいろな素晴らしい活動を展開しました。これは非常に素晴らしいことだけれど、これとてロータリーだけの専売特許の活動ではなく、沢山の団体がいろいろな活動を展開しています。むしろロータリーのやっていることなど、ささやかなことに過ぎません。そう考えていったときに、ロータリーは他の団体と根本的に違う点はなにか、ロータリーの主な使命は何なのか、ロータリーは何をなすべきなのかという命題が浮かび上がってきます。

 1949年にRI会長をつとめたパーシー・ホジソンが、Service is my business「奉仕こそわがつとめ」という本を書いていますが、その冒頭でモリエールの喜劇「にわか紳士に変わった商人」という話を引用して、職業奉仕の説明をしています。
 無学な商人が、さる高貴な美しい女性に恋をしました。ラブレターを書きたいのですが、無学なので字を書くことができません。だから町の代書屋さんに頼みに行きました。そのとき彼はどこかで聞きかじったことを口に出します。その女性に強いインパクトを与えるラブレターを書いてもらうために、韻文でも散文でもない文章を書いてほしいと頼んだのです。
 皆さんには、もうこの話の落ちはお分かりになったと思いますが、韻文というのは韻を踏んだ文章なのです。文法的には正しい配列にはなっていませんが、例えば最後の言葉をすべて「n」で結ぶという形で、きれいな響きにする、いわゆる「詩」の文章です。そしてもう一つは私たちが日常使っている文章、これは散文です。世の中の言葉には韻文と散文しかないわけです。彼はそれを知らなかったために、このような注文を出したわけです。すなわち、彼は自分が使っている言葉を散文だと自覚せずに、上手に散文を使いこなしていたという寓話です。
 これはまさしく私たちロータリアンにも当てはまることです。職業奉仕だと自覚せずに、立派な職業奉仕活動をしているロータリアンが沢山いる一方で、職業奉仕とはほど遠い次元で昼食会を楽しんでいるロータリークラブの会員も存在します。さらに、職業奉仕の定義を知らないロータリアン以外の人が、ロータリアン顔負けの職業奉仕をしている事実も忘れてはなりません。
 沢山ある奉仕クラブの中で、唯一職業奉仕を錦の御旗としているのはロータリー以外にはありません。職業奉仕こそがロータリーの特徴であることを是非理解していただきたいと思います。ロータリークラブ方の奉仕クラブと根本的に異なる点が職業奉仕にあるとするならば、職業奉仕とは何かという定義を理解しないことには、ロータリアンになった値打ちはないということになります。
 いろいろなボランティアであるとか、人道的援助であるとか、国際親善であるとかは、素晴らしい活動であることは間違いありません。しかし、それらの活動は他の奉仕クラブや専門の団体が行っている活動です。他の団体の考えの及ばない奉仕活動の分野、これが職業奉仕であるとロータリーは考えたわけです。それならば職業奉仕とは何か、職業奉仕を全面に押し立てたロータリー・アクティビティとはどんなものか。これをロータリーの歴史の中から探り出していきたいと思います。
 ボランタリズムに基づいたいろいろな奉仕活動も素晴らしいことです。しかし職業人である私たちにしかできない奉仕活動とは何か。私たちが毎日の職業生活の中で、いかにすれば職業倫理を昂揚できるかを考え、こういう態度で職業生活を営めば、世のため人のために一番役に立つのだという職業生活を、自分の職場で考えながら実践していく。ロータリアンは、それぞれのテリトリーにおける職業を代表した人で構成されているわけですから、自分の職場において高められた職業モラルを、ロータリアンでない同業者に広めていただく。それによってその業界全体の職業モラルが上がっていく。そういう日常的な職業生活を、ロータリーでは職業奉仕と呼んでいるのです。

 職業奉仕という言葉は、単に職業と奉仕とを結びつけた熟語ではありません。ロータリーが考え出した哲学的な意味を持つ言葉であり、その概念も一朝一夕に出てきたものではありません。ロータリーの創立時から、数々の議論を重ね、経験を積み上げ、お互いに理解しながら会得していった集大成が、ロータリーの基本理念とも言える職業奉仕なのです。
 そして何よりも重要なことは、その考え方で毎日の職業生活を営んでいけば、必ずその事業は永続的な発展が約束されるということなのです。どんな不況にも耐え抜く強靱な企業体質を作る経営戦略こそ、ロータリーの職業奉仕であり、そのための適正な profits とは何かを考えていく。そういう理論構築を昔のロータリアンは行い、さらに1929年から起こった世界大恐慌の時に実証したのです。その辺の所をロータリーの歴史を遡りながら検証してみたいと思います。

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