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同業者との関係をどうする

次の問題は、同業関係です。ロータリーは一業一会員制ですので、一つの職種から一人だけ入会できる。同業者はクラブに入れません。その同業との関係をどうするかということです。
 これはまず、同業組合を結成するということです。資本主義経済社会の自由競争の世界では、同業者というものは食うか食われるかの競争関係に立ちます。そしてこの自由競争には、プラスの面もあればマイナスの面もあります。資本主義社会のプラス面は、お互いに競争しますから技術開発に役立ちます。販売技術も製造技術も、技術革新によって進歩します。
 しかし反面、同業者がいるために、「オレが潰れる前にアイツが潰れてほしいな」という訳の分からない感情のとりこにもなり、お互いに疑心暗鬼になります。したがってこの同業関係を正常化するには、マイナス面の疑心暗鬼を取り除いて、プラスの面を伸ばしていけばいいわけですから、同業関係でロータリアンがなすべき仕事というのは、同業組合を作り、同業者同士がいろいろなアイディアを共同して開発していく、そして自由競争だけはフェアにやろうと、提唱し実践することです。
 アイディアの共同開発、そしてそのアイディアを公開していく、ノウハウの公開ということが大変重要な柱になります。しかし、「ノウハウを公開したら、オレの会社は生きていけない。秘密が全部ばれてしまうではないか」と考える方があるかもしれません。それは、そのような産業秘密的なものを公開しろといっているのではありません。なぜならば、それはまだ証拠立てられておりません。完全に証拠立てられて、これは絶対大丈夫、必ず成功するというものしか公開してはなりません。そうでなければ、産業秘密的なもの、いまだ証拠によって立証されていないものを公開して、もしそれが失敗に終わったとすれば、自分が失敗したのは自業自得ですが、全然関係のない人まで失敗に巻き込むことになります。それはできません。完全に証拠立てられたものでなければ公開してはならないのです。これがノウハウの公開です。
 例えば、1954年から55年にかけて国際ロータリーの会長であったハーバート・テーラーは、「四つのテスト」を開発しました。彼は倒産したアルミ食器会社の社長を引き受けたのです。そしてこの会社を数年のうちに一流企業に育て上げていったのですが、その秘密はこの「四つのテスト」を考え出したことにあります。
 この「四つのテスト」にしたがっていけば、必ず成功すると考えて、みんなで力を合わせて、アルミ食器会社を隆々と栄えさせました。商工会議所の人達はそれをみていました。「おいハーブ、君はあの倒産会社を数年のうちに一流企業に育て上げた。何か秘訣があるのだろう。ノウハウがあるのだろう。手の内を明かせよ」と言いました。「実はこの『四つのテスト』がその秘訣なのだ」と。
 そこで、商工会議所の人達は、それを傘下の職業人に公開して、ハーバート・テーラーの会社はこの「四つのテスト」でもって成功したのだから、これに沿ってやればいい、と言ってそのノウハウを公開しました。それをみていたシカゴクラブの人達が、「なんだハーブのやつ、ロータリーでは黙っていて商工会議所であんな素晴らしいことをしている。ロータリーにも公開しろよ」と言うので、1954年に彼が国際ロータリー会長になったときに、「四つのテスト」の版権をロータリーに委譲したという経過があるのです。これはノウハウの公開の一例です。
 このように完全に証拠立てられたものを公開しなければなりません。もう一つ例を出します。この話は伊丹クラブの荘司先生から伺った話です。先生のお父様の兄弟弟子にあたる千葉医大の中山恒明教授の話です。彼は食道癌の権威でありますが、2年間訓練を受けた外科医であれば誰にでもできる簡単な食道癌の手術の方法を発明しました。そしてそれを誰にでも教えたのです。自分一人では1日に100人の患者の手術をすることができない。しかし、その技術を100人の外科医に教えておけば、1日に100人の患者が救済できる、と言ってそれをすべて公にされました。千葉医大のみならず他の大学の先生にも公開されました。そして自分だけのものにしない、医は公のものであるという思想、すなわち中世ヨーロッパの神学の分かれとしての医学、その精神世界に生きた人だと思います。これもまさにノウハウの公開の好例です。ノウハウを自分だけのものにして、自分だけ儲けようなどという思考は一切ない。ひたすら患者を救うために、一人でも多くの外科医を育てておけば、一人でも多くの患者が救済されるという考え方です。
 次に、ロータリークラブの中でどのような不況期にも倒産しない強靱な体質を作り上げるためにはどうすればよいのか。そしてこの自由競争をフェアーにする業界を作り上げるためにはどうすればよいのか。そのためには、職業人として、為すべきこと為すべからざることをお互いに誓い合って、その職業倫理を業界に宣言しなければなりません。その職業倫理は、商工会議所や同業組合を通じて宣言することによって業界を浄化していく。これがロータリーの奉仕の眼目の一つなのです。したがってロータリーの奉仕は、金を集めて世のため人のためのことを考えるのではなく、同業関係においては、商工会議所や同業組合を育成し、倫理を提唱することによって業界や地域社会を浄化していく点に奉仕の第一眼目があるのです。
 商工会議所というものは、もともと14世紀頃に、イタリアにその発祥をみるものであり、商人だけの利益を守るギルド、すなわち組合です。やがてそれがアメリカの社会に移し植えられまして、20世紀初頭にはすでにロサンゼルスやニューヨークには商工会議所がありました。
 チェスレー・ペリーは、「ロータリーができたときのことを考えてみよう。アメリカ経済社会に商工会議所は所々あったが、何を為すべきかを見失っていた。そして同業組合は一つもなかった。このようなアメリカ経済社会に、ロータリーが同業組合や商工会議所を作り、そして商工会議所や同業組合を、倫理を提唱する団体として育てていった。これがロータリーがアメリカ経済社会に与えた最大の功徳である」と言っているのです。

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