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誇大広告は禁止が原則

 ではそれは具体的にはいったいどういうことなのか。これは各論の課題になりますが、具体的な事例を申し上げていきます。私たちは物を売り買いします。ほとんどすべての取引は、売買という形で集約されます。日本の民法典には13種類もの契約が列挙されております。契約自由の原則がありますから、さまざまな契約があるのですが、特に13種類の典型的な契約だけを規定しています。
 その中で中心になるのは売買契約です。条文の数も多いのです。まさに売買というものは、Master Contractすなわちすべての中心になる契約です。労働を売って賃金を受け取る労働契約は、労働力の売買であり、講演をして報酬を得るのは知識の売買です。物を借りる賃貸借は、使用価値の売買です。このようにほとんどのことは売買に集約されます。したがって売買という契約はすべての中心ですが、物を売ったり買ったりするときに、職業奉仕はどのような原則をたてているのかということを検討してみます。
 まず物を売る前にはどのような原則があるのか。物を売る前の原則としてロータリーは「誇大広告の禁止」を掲げています。真実のみを語れということです。自分の物を売りたいために、どうしても誇大に広告します。広告の行き過ぎはよくない。誇大広告はしてはならない。1949−50年のRI会長パーシ・ホジソンが、「奉仕こそ我が勤め、Service is my business」という有名な本の中で、次のような事例が出ています。
 あるデパートでレインコートが沢山売れ残りました。社長はその売れ残りのレインコートを早く処分して、その後に新しい商品を入れたいわけです。そこで販売課長を呼んで、これを早く処分して新しい商品を入れるよう、土曜日に命令して帰りました。販売課長は日曜日に広告を出しました。
 「当社の倉庫には売れ残りのレインコートが沢山あります。中にはまだ新品同様のものもございますが、中にはもうほとんど使いものにならないものもあります。しかしいずれにいたしましても、それ相応の値段を付けておやすくしております。月曜日を特売日と決めますので、お求めになりたいお客様はできるだけ早くお越し下さい」
 その社長は日曜日の広告を見て激怒しました。「売れ残りのレインコートがあるとは何事か。しかも中には使いものにならないものもあるといっている。何という広告だ」カンカンに怒って月曜日に出社しました。社員が「社長どうしてそんなに怒っているのですか」とたずねると、「あの広告を見たかね。あの広告はいったいなんだ」と叱りつけたのでありますが、「社長、レインコートはもう全部売れちゃって、何もありません」と。客は何を買ったか。真実を買ったのです。ほとんど役に立たないレインコートでも野良着に使えます。ただ同然の値段で買えば役に立つわけですから、客のニーズに合わせて、真実そのまま述べたために、客が殺到して、一気に全部売れてしまったのであります。したがって、物を売る前には真実のみを述べよ。誇大広告の禁止ということを職業奉仕は説いているのであります。
 それからこれと関連した原則があります。それは同業者を誹謗してはならない。同業者の商品を悪くいって、自分の商品を売りたくなるのは人情ですが、これも誇大広告の一側面であります。昔あった広告で、「となりの車が小さく見えます」というのは、職業奉仕の原理からみると、望ましい広告ではありません。
 それから売る前の心構えとして、商売以外のことによって客に自分の誠意を印象づけるという作業も必要です。例えば、訪問販売の時に、買ってくれなくても退出するときに、靴が乱れていたらそっとその靴をそろえて出てくるとか、いつもお客さんのため、お客さんのためと思って行動するとかです。すなわち行動に愛を込めることが必要であります。
 それからもう一つ売る前の問題の事例を紹介します。薬問屋の番頭の話です。北海道のある病院に新しい薬をもって、売り込もうとしたのですが、その病院には以前からの薬屋が入っていて、新たに食い込むのは至難の業です。どうしても売り込むことができない。そこで彼は考えました。毎朝院長の家の前の雪を一生懸命掻きだしました。雪掻きというのはたいへんな重労働です。山形の方では毎年1人か2人が死ぬのだそうです。そして雪を掻くために毎年30万円から40万円のお金がかかるそうです。我々の想像のつかない世界です。札幌あたりも雪が多い。その雪を一生懸命掻きはじめたのです。
 院長の奥さんが気味悪くなって、頼みもしないのに雪を掻いてくれる。「あなた、あれちょっと見て」院長が見ると、「あれは、この間病院に来た薬屋だ」呼び入れて、「どうして雪を掻いてくれるのか」と尋ねたところ、「いや私は薬屋ですから、雪は掻いていません。私の店の商品が絶対に信用できる商品であるということを、先生にわかってもらうためには、まず自分が誠意ある人間であるということを見せなければなりません。自分の商品を取り上げて、これはいい商品ですと言って自分でほめても、これはサマになりません。自分の誠意をどのように披瀝したらいいか、それを示すために雪を掻いているのです。したがって現象として見えるのは、雪を掻いていますけど、私か薬を売っているのです」と答えたそうです。おもしろいやつだということで、それからその病院と取引が成立しました。
 これなんかも、物を売ること以外の行動によって、相手にアピールしていく、そのことが一つ大事なことだろうと思います。

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