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適正価格を守れ

 それから次に、売るときにはどのような原則があるのか。これは「適正価格」を守らなければならない。適正価格を守るということは簡単なようですが、実は簡単ではありません。特にオイルショックのような価格の変動期には、誘惑が強いのです。いくら値上げしても、どんどん売れるのですから、誰でも値上げしたくなります。そのときに適正価格を守ることは、まさに至難の業です。
 2世の社長が、浅草で高級スリッパの製造卸売業を営んでいます。オイルショック時に、卸売業者が一斉に値上げし出しました。例えば100円のスリッパが1000円、2000円で売れるのです。2代目の社長ですから、先代からの番頭が、「社長、うちも値上げしましょう」と言ったのですが、社長は頑として聞き入れませんでした。「いや、うちの商売は、例えば50円で原料を仕入れて、20円の加工賃を加えて、それに30円の利益をのせて、100円で売って商売が成り立つようになっている。よそがいくら値上げしても、うちは100円で売って、先祖代々商売ができるようになっている。これがうちの商業道徳、職業倫理です」と言って応じなかったのです。
 これは取締役会で大問題になりまして、「社長、あなたはまだ嘴が黄色い。商売はいつ倒産するかわからないから、儲かるときに思い切って儲けておかないとだめです。しかもうちは卸売業者です。仮に100円で卸しても、小売業者が2000円、3000円で売れば何にもならないではないですか」と言ったのです。しかし社長は、「いや、それは小売業者の職業倫理の問題であって、そのためにうちの職業倫理を曲げるわけにはいかない」といって頑として聞かなかったのです。これは打算の世界の論理からいきますと、まさに大損をしたことになっています。しかし彼は、お客様の足元を見て値上げするということをしなかった。ひたすらお客様のことを考えて、まさに愛情の世界の倫理をもって自分の企業をマネージしたわけです。
 あのような価格の変動期というものは、必ず揺り戻しがあります。やがて不況がやってきました。卸売業者がどんどん倒産する中、その会社の注文だけは前にもまして増えるのです。小売業者が、「社長、あの価格の変動期に、我々の足元を見ないで、従来の価格を守ってくれたのはあなたのところだけでした。我々はあなたに対して借りがある。したがって、どんなことがあっても、あなたのところにだけは注文を出します。そしてあなたのところで注文を背負いきれない場合は、あのときの値上げの幅の少なかった業者に注文を出すことにしたのです」と言ったそうです。その会社は永続的に安定した利潤を獲得しながら隆々と栄えています。
 これは、売るときには適正価格を守れという職業奉仕の原理の一つの例証です。

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